『石橋湛山の65日』(保坂 正康著、東洋経済新報社、2021年4月8日発行)

昭和21年吉田内閣の蔵相となり、昭和22年4月の選挙で静岡県から当選するが、5月に公職追放。この間の記録をみると吉田茂の関与を否定できない。吉田茂という男は極めて卑劣という感を持つ。

石橋湛山という人物については本書を読むまであまり知らなかったが、言行を一致させ、軍部にもGHQにもおもねらず持論を述べてきた、という点で確かに立派だと思う。昭和14年8月31日東洋経済新報社本社在勤社員を集めて「今後言論圧迫来るも良心に反する行動を絶対に取るべからざること」の決意を述べ、それを実行したことに感心する。

また、官からの依頼で様々な委員会などの役職を務めたという点では官からも信頼されていたのであろう。彼が首相として長く勤めたならば日本の政治の歴史が変わったのかもしれない。

未だに印象に残っているのは、石橋湛山が組閣名簿をある人に提出したとき、深刻な表情で、岸をなぜ外務大臣にしたのか?彼は先般の戦争に対して東条以上の責任がある、と述べたという箇所だ。ある人とは、昭和天皇と著者は推測するがそのとおりだろう。

結果的にみると昭和天皇の危惧はあたっていたわけだが、岸は安保騒動を起こして退陣したのが唯一の救いだ。しかし、こうして安倍という腐った男が総理になるというところまで来たわけだ。石橋湛山が岸を外務大臣にしたのは当時の勢力図からのようだが他に選択肢はなかったのだろうか?という疑問大。 

『岸信介 ―権勢の政治家―』(原 彬久著、岩波新書、1995年1月20日発行) - anone200909’s diary