『歴史探偵団がゆく 昭和史が面白い』(半藤 一利編著、文藝春秋、1997年1月30日)

昭和のさまざまなできごとを当事者に近い人2人を交えて、半藤氏の司会で語った物語を集めた本である。28の話題があり、既に知っていたこともあるが、知らなかったできごと、表面的にのみ知っていたこと、懐かしいできごとなどがならんでいる。

できるだけ当事者の話をきいて残そうという趣旨もあり、下世話ではあるが生に近い貴重な情報が詰まっている。

個人的には大阪万博の話を懐かしく読んだ。大阪万博は1970年だから大学2年のときか。何回も行った記憶がある。

印象深いのは藤原ていなかにし礼の「引き揚げ」修羅の記憶かな。『流れる星は生きている』という引揚体験記は一度読んでみたい。

数寄屋橋慕情も良い。戦後すぐの頃は銀座にはたくさんの川があったというのはまったく知らなかったが、数寄屋橋という地名から連想するべきであった。江戸時代から明治まで続いた川が戦後になって埋め立てられてしまって風情の無い街になってしまったということなのだ。確か、銀座のあたりは江戸時代よりも昔は海だったと思う。

東京五輪ラソン代表者寺沢徹氏と君原健二氏の回は興味深い。寺沢氏はタイムからすれば優勝、君原氏は3位に入れるはずが惨敗。25から30キロで足が重くなって走れなくなったという。それぞれ自己記録より8分,3分も悪かったと。自分自身へのプレッシャーに負けたということのようだ。プレッシャーは結局心の持ち方なので、平常心を保つのがいかに大切かが分かる。

全体としてみると、自分にとっては同時代よりも10年以上上の世代の時代の物語という感じである。やはり、半藤さんが1930年生まれということがあり、自分の年代に近い当事者を集めたということか。