「昭和陸軍の軌跡」(川田 稔著、中公新書、2011年12月20日)

本書は、昭和陸軍の一派として形成された一夕会を主軸にして、大東亜共栄圏構想、対米戦争にいたる経過を解釈しようというものである。
一夕会は、永田鉄山が中心になって形成した派閥だが、永田刺殺後、その後を継いだ、武藤 章、田中新一の大激論など、極めてビビッドに伝わってくる。
いままでの太平洋戦争開戦への道程を解説した書籍には見られない生々しさであり、読むに値する書籍である。
それにしても、米国との国力の差を認識しながら勝てない戦争に突き進んだ軍部の幹部の傲慢さと感受性の低さには驚くばかりである。