「朝鮮戦争 金日成とマッカーサーの陰謀」(萩原 遼著、文春文庫、1997年)

朝鮮戦争がなぜ始まったのかは、ある程度想像できるし、米軍側を取材した本として「ザ・コールデスト・ウインター朝鮮戦争」を読んだこともある。しかし、本書は北朝鮮側の資料を調査したものである、という触れ込みで関心をもって読んでみた。

金日成ソ連が連れてきて、北朝鮮を統治するためにでっち上げた偽英雄であった、という話から始まる。ほうほうという感じである。

本書では、モスクワ協定を経て、北朝鮮が国家として成立し、朝鮮半島が南北に分断される経過、38度線に終結した北朝鮮軍が1950年6月25日を期して南に進出するというこうした歴史的事実が、北朝鮮側の資料を分析することで生々しく描き出されている。

米軍が朝鮮戦争で奪取した北朝鮮側資料がメリーランドの国立公文書館で公開されているとのこと。主にこの一次資料による調査の結果である。北朝鮮側の資料に基づいているので非常に信憑性が高く感じる。

160万ページに上る資料を読破して、ストーリーとして組み立てて見せるという著者の熱意、努力に脱帽する。

それにしても、日本がソ連と米国に分断されて占領されなくて良かったという思いを禁じ得ない。