アメリカ経済・社会

『アメリカVSロシア 冷戦時代とその遺産』(ウォルター・ラフィーバー著、芦書房、2012年2月12日発行)

第2次世界大戦期から2006年までの歴代の大統領と政権の外交・戦争に関して行ってきたことを概観している。米国の各大統領政権の行ったことの記述も読みごたえがある。第1次世界大戦期にロシアがソ連になり、そして戦後のソ連との対立=冷戦、1991年まではソ…

『リバタリアンが社会実験してみた町の話』(マシュー・ホンゴルツ・ヘトリング著、原書房、2022年3月1日)

ニューハンプシャー州の田舎町であるグラフトンに、2004年にリバタリアンがフリータウンを作った。 ニューハンプシャー州は、「自由な生か、もしくは死」という自由をモットーとする傾向がある。その中でもグラフトンは規制に反対し、税金を少なくしようとす…

『麻薬と人間 100年の物語』(ヨハン・ハリ著、作品社、2021年2月10日発行)

現在の常識になっている麻薬取締の枠組みは、米国の連邦麻薬局長となってハリー・アンスリンガーが中心になって作り出し、国連を通じて国際的に広まったものという。日本でもGHQの占領時代にそれまでは自由であった大麻(マリファナ)が非合法化された。 麻…

『絶望死のアメリカー資本主義がめざすべきもの』(アン・ケース、アンガス・ディートン著、みすず書房、2021年1月18日発行)

20世紀は健康が改善した世紀。米国は1900年から2000年までの45~54歳=中年白人死亡率は1900年には10万人あたり1500人(1.5%)、2000年には400人(0.4%)に減少した。しかし、20世紀の終わり頃から中年非ヒスパニック白人(USW)の死亡率が上がり始めた。…

『アメリカ経済 成長の終焉 上』(ロバート・ゴードン著、日経BP社、2018年7月24日発行)

1870年から1970年までを「特別の世紀」と名付ける。この間は、電気、交通手段、食料保存、水道、医療、労働環境、住宅などすべての面で生活を変えた。この間の米国の経済成長は、特別なものであり、一度きりであることを主張する。1970年以降の変化は、娯楽…

『ヒルビリー・エレジー アメリカの繁栄から取り残された白人たち』(J.D.ヴァンス著、光文社、2013年3月20日発行)

連邦政府の住宅政策は家を持つことを国民に進めてきたが、家を持つコストは大きい。ある地域で働き口がなくなると、家の資産価値が下がって、その地域に閉じ込められてしまう。ミドルタウンはアームコによってできた。 ブルーカラーの仕事は良くないと思って…

『暴落 金融危機は世界をどう変えたのか 下』(アダム・トゥ―ス著、みずず書房、2020年3月16日発行)

金融危機は米国では一旦鎮静化した。その影響で国家財政が落ち込んで2010年には緊縮財政に向かった。 ギリシャ、アイルランド、ポルトガルでは危機が国家財政に破滅的影響を与え、持続不可能な状況に陥る。ギリシャはもともと政府債務が大きすぎた。ユーロ圏…

『暴落 金融危機は世界をどう変えたのか 上』(アダム・トゥ―ス著、みずず書房、2020年3月16日発行)

米国の大統領が変わるごとに財政赤字に関する方針が変わる。クリントン時代にルービンが財政黒字にした後、ブッシュ時代に財政が大赤字に転ずる。中国はドル固定相場で元を安めに固定して競争力を保っていた。中国の巨額の貿易黒字の大部分は財務省中期証券…

『プログレッシブキャピタリズム』(ジョセフ・E・スティグリッツ著、東洋経済新報社、2020年1月2日発行)

アメリカの資本主義はあまりにも一部の人に富が集中する結果に終わっている。アメリカは、全体として以前より遥かに豊かになっているにも関わらず、富が一部の人に集中してしまった。所得階層の上位1%と残りの99%の間に「大分裂」がある。19世紀末の「きんぴ…

『アメリカの制裁外交』(杉田 弘毅著、岩波新書、2020年2月20日発行)

本書は読むとアメリカの制裁外交について、全体をうまくまとめて整理した本だ。前書きに「金融制裁も自らの痛みを伴わずに、相手にできるだけ多くの犠牲を強いるため、相手に与える負のインパクトへの思いが足りないのではないか」とある。本書を読むとまさ…

『ジェインズヴィルの悲劇 ゼネラルモーターズ倒産と企業城下町の崩壊』(エイミー・ゴールドスタイン著、創元社、2019年6月発行)

ジェインズビルは、ウイスコンシン州ロック郡の郡庁所在地の街で人口は6万人余り。万年筆のパーカー・ペンとGMの組み立て工場があった。GMの工場は1923年から稼働しており、下請け企業を含めて大きな雇用を生み出していた。時給が高く、働く人たちは中産階級…

『フラッシュ・ボーイズ 10億分の1秒の男たち』(マイケル・ルイス著、文藝春秋、2014年10月10日発行)

第1章のスプレッド・ネットワークス社はいかにもアメリカである。シカゴとニュージャージーの間を往復すると、ベライゾン、AT&Tなどの通信会社の線は14.65ミリ秒から17ミリ秒かかる。しかし、理論上は12ミリ秒のはず。スプレッド・ネットワークス社はシカゴ…

『ウオール街のアルゴリズム戦争』(スコット・パターソン著、日経BP社、2015年11月発行)

1990年代から2010年代初頭までの、米国の株式市場が完全に電子化され、急速に変化する過程を取材したドキュメンタリーである。高速トレード(HFT)の勃興による、取引のアルゴリズム戦争化はほとんど信じられないほどである。 動きの速いボットによるフロン…

『アメリカの終わり』(フランシス・フクヤマ著、講談社、2006年11月28日発行)

本書のテーマは2001年9月11日以降の米国の外交政策である。フクヤマは自分自身がネオコンであると考えてきたが、イラク戦争を始めた動機になっとくできなかった。イラク戦争は意味がないと考えていた。ネオコンはフクヤマにとってもはや支持できないものとな…

『ブレないトランプが世界恐慌を巻き起こす』(大竹 慎一著、徳間書店、2018年10月発行)

この本は読む価値があるのだろうか? ⇒あるかな・・・。いままで知らなかった概念を幾つか学べた。 米中貿易戦争をみて、この根本には、アメリカの国家戦略が変わった、中国との間で安全保障上の脅威を感じている、というのは合意できる。 対中追加関税2500…

『壁の向こうの住人たち アメリカの右派を覆う怒りと嘆き』(A.R. ホックシールド著、岩波書店、2018年10月発行)

素晴らしい調査のまとめ。多民族・多宗教国家のアメリカならではの問題もあるけど、ルイジアナの環境汚染のひどさに関わらず、環境規制に反対するという矛盾がなぜ生じるか? ということが良く理解できる。 ただ、最後の部分のルイジアナ州でトランプが人気…

『リバタリアニズム』(渡辺 靖著、中公新書・中央公論新社刊、2019年1月25日)

リバタリアンとは、自由市場・最小国家・社会的寛容を重んじる人達。 アメリカではリバタリアン党がある。リバタリアン党は第3党だが小さな党で、50万人しか党員登録がない。リバタリアン系の団体は沢山ある。リバタリアン党の創設者ノーランチャートの絵で…

『操られる民主主義 デジタル・テクノロジーはいかにして社会を破壊するか』(ジェイミー・バートレット著、草思社、2018年9月発行)

本書は、インターネット・テクノロジーの民主主義への脅威を警告する。具体的な例としては、第3章 ビッグデータと大統領選が一番だ。2016年のアメリカ大統領選の「プロジェクト・アラモ」にはびっくりだ。選挙の投票行動に影響を与えられそうな人を選んで、…

『ふたつのアメリカ史[南部人からみた真実のアメリカ]』(ジェームス・M・バーダマン著、東京書籍、2003年発行)

アメリカの歴史を、入植者の集団の違い、地域特性の違いなどから南部、北部に分けて説明する。我々は、アメリカという国を一枚岩の連邦政府として理解しがちだが、実は南部と北部は全く違う特性をもっているということを主張している。南部は、第二次大戦ま…

『アメリカ 暴力の世紀』(ジョン・W.ダワー著、岩波書店、2017年11月発行)

第2次世界大戦後のアメリカの戦争、他国への介入、暴力の仕様についての書である。アメリカの巨大な軍事力による世界支配は、狙いとは逆の混沌を作り出してしまっている、というのが著者の一貫した主張のようだ。実際のところ、それは第三者的な傍観者でも直…

『歴史の逆襲』(ジェニファー・ウエルシュ著、朝日新聞出版、2017年5月)

本書はもちろんアメリカの政治学者フランシス福山『歴史の終わり』に対するアンチテーゼである。『歴史の終わり』は東西冷戦の終結により、共産主義に対して自由民主主義が勝利したことは人類の歴史が自由民主体制へむかって収束しつつあること、それ以外の…