『フラッシュ・ボーイズ 10億分の1秒の男たち』(マイケル・ルイス著、文藝春秋、2014年10月10日発行)

 第1章のスプレッド・ネットワークス社はいかにもアメリカである。シカゴとニュージャージーの間を往復すると、ベライゾンAT&Tなどの通信会社の線は14.65ミリ秒から17ミリ秒かかる。しかし、理論上は12ミリ秒のはず。スプレッド・ネットワークス社はシカゴの先物契約とニューヨークの現物市場の価格差の取引で儲けを得るためにデータセンター間をできるだけ直線で結ぶ光回線を設置し、13ミリ秒に短縮する。前払い1060万ドルと費用、分割払いは約2000万ドルでウォール街に売り込む。

第2章は、画面取引が消える話も面白い。2007年7月には、大口取引は、取引所の距離が一番近い取引所で取引ができるだけとなってしまう。遠い取引所までのオーダーの遅延時間内に、高速取引業者に先を越されてしまう(高速トレーダーのフロントラン(先回り))。トレーダーは問題に気が付いても、原因を追及できず。RBCのブラッド・カツヤマのみが探求に乗り出す。

第3章は、超高速取引業者にスピードを売り歩くローナンの話。2009年秋、ブラッドはローナンを採用し、二人でソーを投資家に売れる製品に育てる。ウォール街の投資家は何が起きているのか誰も知らない。

2010年5月6日フラッシュ・クラッシュが起きる。

スプレッド・ネットワークスの回線が稼働して2週間後CBSXが流動性をテイクする側に報奨金を払うようになった。メイクする側から金を徴収する。注文をシカゴに送るブローカーを誘き寄せる。

 第4章全米市場規約により、フロントランナーのチャンスが大きくなった。13の株式市場の価格がSIPでまとめられ、SIPが全米ベストビットアンドオファーを決めるのが原因。RBCは真実を大っぴらにすることを認めない。証券取引委員会の職員は2007年以降200人以上が官職を去り、超高速取引業者に移るか、ロビー活動を行う企業に移った。

2008年には65%が超高速トレーダーによって扱われた。

 第5章は、ゴールドマン・サックスのコードを盗んだかどで逮捕されたセルゲイ・アレイニコフの話。本書では異色。しかし、ウォール街にロシア人の開発者が多い理由は面白い。コンピュータを使える時間が少なかったので、デバッグを最小にするプログラムの書き方、まず最初に頭で考える、を経験した。

 第6章は、ブラッドがRBCをやめて新しい取引所IEXをつくろうとする話。成り行き、指値という古い形式以外に150種類もの新しい注文形式があった。いずれも超高速トレーダーを有利にするもの。超高速トレーダーの捕食行動の3パターンは、電子フロントランニング、報奨金さやとり、スローマーケットさやとり。いずれもスピード頼み。これらをつぶす方式を組み込む。

第7章は、IEXが始動するまで。透明なダークプールとして。2013年10月開業。

 2013年12月19日ゴールドマンが大量の注文を出す。

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