『ブレないトランプが世界恐慌を巻き起こす』(大竹 慎一著、徳間書店、2018年10月発行)

この本は読む価値があるのだろうか? ⇒あるかな・・・。いままで知らなかった概念を幾つか学べた。

米中貿易戦争をみて、この根本には、アメリカの国家戦略が変わった、中国との間で安全保障上の脅威を感じている、というのは合意できる。

対中追加関税2500億ドル。携帯電話とコンピュータ、テレビ、アパレルは除外。

世界の自由貿易体制は縮小する。右翼・国粋化。政治はポピュリズムへ傾斜し、戦争のリスクが高まる。グローバリズムアメリカファースト。

減税効果が大きいので、関税分の値上げは消せる。減税と関税のセットを考えている。

2017年末の米国株価の上昇は、トランプ減税案による。17年12月に成立した。減税⇒消費拡大⇒経済拡大。減税の財源は関税と考えているか?

米国FRBは、金利アップと量的拡大時の保有資産縮小が必要。金利上昇するとFRBが買い込んだ資産(債券)の価格が下がってFRBの欠損の危険がある。これはドル安の要因でもある。

 2018年2月初旬の米株価暴落はインフレ懸念による。

アメリカはインフレにはならない。理由はネット小売業とリアル小売業の争いでデフレ圧力が働くから。第2はシェールオイルの増加。

アメリカの消費者物価指数は低下傾向にある。賃金上昇率も低下している。賃金上昇の定価は高齢者の労働参加による賃金低下圧力。65歳超の30%、70%超の18%が働いている。

◎株評価指標

PER指数は景気に敏感である。PERは金利と株価の相関であり、金利が1%あがるとPERは3つ収斂する。現状金利でPER18なら、金利が1%上がるとPER15が適切となる。つまり金利1%アップで株価は20%ダウン。金利があがると株価には向かい風となる。

PER25倍程度?(US株)PER40倍はどうしたって無理。

ROE(純利益/純資産)は信頼できない。分母のE(株主資本)は株の買い戻しすると減ってROEが上がる。借金してROEを上げる経営者がいる。しかし、銀行から金を借りればB/Sの負債が増えてROEが上がる。ROA(Return on Asset=総資産利益率、純利益/総資産)やデッドエクイティレシオ(負債/自己資本、1が基準)を重視する。

株主還元として自社株買いと配当がある。バリューファンドにとっては下値リスクを減らす=配当の方がありがたい。

またPBV(株価純資産倍率)は、株価が一株あたり純資産の3倍を超えると危険。0.5~2.5の範囲であること。

 ◎円高

マーケットのショックで円のキャリートレードの巻き戻しがあり、円高となる。

トランプは自動車をやり玉にあげるだろう。ドル安で輸出を増やすつもり。⇒円高になる。

日本ではマネタリーベースの伸びが鈍っている(引き締めと同じ)。アメリカはマネーサプライが減っていない。⇒円高になる。

円安銘柄は買うな。

◎破綻リスク

米国では、サブプライム自動車ローンと学資ローンの残高が大幅に増えている。サブプライム自動車ローンで100%借りる。しかし、貸し倒れが増えている。アメリカの大学の授業料は高騰して いる。しかし、見返りの給料がとれない。短期金利は低いのに学資ローンは6~8と高い。

◎歴史は繰り返す?

リーマンショック10周年

クリントン時代に金融自由化:1999年にグラム・リーチ・ブライリー法グラス・スティーガル法を骨抜きにし、5大投資銀行の誕生⇒2008年にリーマンブラザーズが破綻。

その反省でドット・フランク法がでて、銀行業と証券業の兼業と銀行の自己売買に制限。またボルカールールで自己勘定取引に制限やヘッジファンドへの出資を禁止。

しかし、これをトランプが廃止しようとしている。

◎コンピュータは人類の遺産

アマゾン、グーグル、インテルマイクロソフトは大もうけしているが、こうしたビジネスは人類がいままで積み上げてきた成果の上に成り立っている。IT企業だけがフロンティアを切り開いたのではない。人類の遺産相続がベーシックインカムである。