『ファンダメンタル投資の教科書(改訂版)』(足立 武志著、ダイヤモンド社、2009年1月発行)

本書(4章まで)はベーシックなことを説明している。まさに初心者向けの教科書といえる。但し、後ろの方、特に第5章大失敗しないための買い方・売り方はチャートのテクニカル分析である。

・情報源の見方:会社四季報決算短信有価証券報告書

四季報

今季・来季の会社の業績予想が載っている。PER, PBR, 配当利回り

財務:自己資本比率50%で合格。20%以下は安全性に問題あり。

CF計算書の現金同等物残高対有利子負債を比較する。営業CFが赤字は本業で稼げていない。

オーナー企業、子会社はTOBで非上場化されるリスクがある。財務大臣が大株主の会社は株放出のリスクがある。外国人株主が多いかどうか。

テーマ株は期待で動くところが大きい。

決算短信

決算日から45日以内に公開義務があり、四季報よりも速報性がある。

※予定遅延は赤信号。

当期の売上利益実績と来季の予想が重要。四季報と比較する。

包括利益は、ある期間の資本取引を除く、純資産の変動を示す。

有価証券報告書

決算日の約3か月後迄OK

指標

実質PER=株価÷(経常利益×65%÷発行済み株式数)

特別損益を除いて考えてみる。

高成長企業はPERが高くても良い。

ROE Return on Equity 自己資本当期利益率 は株価を媒介していない。成長株を探すのに良い。ROEが高いと株価は上昇しやすい。

PER×ROE=PBR(自己資本=純資産と仮定する)

PBRが小さい理由が、ROEが大きく、PERが小さいなら有望株である。

1株あたり予想当期純利益は、業績予想を修正しないと変わらない。

配当利回りの注意点

配当利回りが高い会社については、将来、配当金が減る可能性がないかチェックする必要がある。将来、業績の下方修正と配当金の減額があったらダブルパンチを食らってしまう。

成長株投資

成長株の定義

①過去3年以上、売上や利益が増加を続けている。

②当期以降も売上や利益が増加する見込みである。

成長株はPERが高く、ハイリスク・ハイリターンである。成長株は売買のタイミングが重要である。

レバレッジ経営ではROAROEとなる。ソフトバンク・グループ、ライザップはその見本だ。

ユニゾホールデリングスは、大幅な増収・増益でPERが低いにも関わらず、株価は下落した。本書では株価のトレンドをみろと書いてあるが、実際は、負債が多すぎて敬遠されたのではないか? すでにユニゾは非上場になっている。

※負債総額3000億円を抱える不動産会社のユニゾHD

地銀を赤字に突き落とす可能性も、「ユニゾ騒動」本当は誰が悪いのか | 今週の週刊ダイヤモンド ここが見どころ | ダイヤモンド・オンライン

ユーザーローカル(3984)は「増収増益にもかかわらず、株価下落が続いている。」と本書には書かれているが、その後は、持ち直している。いまでもまだ増収増益が続いている。2021/8/21時点でPER40倍。

成長企業を探すのは難しくはないだろうが、投資で利益を得るのは難しいのではないか?

大失敗をしないための買い方・売り方

業績が良いのに、株価が下がる原因は?

①実際の業績が予想より悪いことを株価が織り込んでいる。株価の先見性。-業績の発表が遅いことに注意する。

②業績は良いが、株を売りたい投資家が多いため株価が下降トレンドになる。-株価にはトレンドがある。需給バランス。

需給バランスについて:裁定解消売りによる株価下落圧力

先物取引日経平均先物

日経平均先物に買いが入ると先物価格が上昇し、次いで現物に買いが入って価格が一致する。

裁定買い先物が現物より高いとき、先物を売り、現物を買うと利益が得られる。SQ日(3,6,9,12の第2金曜日)に反対売買して確定する。それ以外のタイミングで裁定解消売りでも確定できる。裁定買いが減少していれば、その後、裁定買いで株価の上昇が期待できる。裁定買いが積みあがっていればその後裁定解消売りで株価が下がることに注意する。

信用取引の解消による株価の下落信用買い残高が増えてくると6か月後までに反対売買による株価の下落の可能性がある。

信用評価損益率がプラスマイナスゼロに近づくと相場の過熱感が高まり、天井をつけやすくなる。信用評価損益率が-20%に近づくと損失覚悟の投げ売りで、大幅下落の可能性があるが、出尽くすと反発する。

個別銘柄でも、信用買いは将来の売り需要、信用売りは将来の買い需要となる。

※これらは、短期売買のための知識である。

パニックによる売り 危機のときは株式を保有していること自体がリスクになる。

不人気

業績予想と株価の相反は、株価を優先する。

重要なこと

1.株価が下降している下降トレンド局面では買わないで、上昇している上昇トレンド局面で買うこと。

2.損切する。

3.上昇トレンドでは持ち続ける(売却目標線は設けない)。

〇テクニカル面でのサインにより売買する。ファンダメンタル投資と銘打ちながら、その限界を語って売買は、テクニカル分析によるように勧めるとは矛盾なのだが。