『外資系アナリストが本当に使っている ファンダメンタル分析の手法と実例』(松下 敏之・高田裕共著、プチ・レトル株式会社、2017年7月発行)

企業のファンダメンタルを分析する手法についての本。ファンダメンタル分析とは企業の実際の活動を分析し、評価する方法。株価は企業が将来生み出すキャッシュフローを期待して決まるということを前提とする。必然的に長期的な視点となる。但し、長期的に株式を保有することと、長期視点で分析することは違うという。

アナリストには証券会社などに所属するセルサイドのアナリストと、本書の著者のようなバイサイドのアナリストがいる。

株価の評価を行う二つの方法

DDM(Divided Discount Model:配当割引モデルDDMは株主が将来に渡って得るキャッシュフロー。永遠に持ち続けるなら配当の総和である。売却を想定するなら配当の総和と売却益を合算したもの。(配当をコントロールできない少数株主向け)

・DCF(Discount Cash Flow)DCF法は事業価値を企業が将来に渡って生み出すキャッシュフローを現在価値に割り戻した総和と考える。企業価値は非事業性資産と事業価値の総和。株式価値は企業価値ー負債。 

現在価値と将来価値

現在価値=将来価値÷金利

100万円=X÷1.02

金利2%のとき、現在の100万円の1年後の将来価値は102万円

将来の100万円の現在価値は100/102=98万円である。

資本コストは企業が投資家に資金調達の見返りとして払う最低限のコスト。

資本コスト=投資家の要求収益率=割引率。

現在価値=将来価値÷資本コスト

トータルリターン

インカムゲインと配当の合計

DDMは、永久に配当を受け取るとしたときの株式価値の計算だが、途中で売却したことを考えれば、DDMはトータルリターンで考えることに相当する。

DDMの3つのモデル

a. 配当額固定: 株式価値=配当額/資本コスト

b. 配当額一定成長: 株式価値=初年度配当額/(資本コストー配当の成長率)

株式価値=時価総額 とすると、式は次のようになる。

配当利回り=配当額/時価総額=資本コストー配当の成長率

c. 二段階成長モデル(ある期間まで配当を予想し、その後は一定成長を予想する)

PERとの関係

PER=時価総額/純利益

時価総額=PER×純利益

1年後の目標株価=PER×1年後の純利益

PER(0-1):1年後の純利益予想から見た株価

PER(0-1)=1年後の配当性向/(資本コストー配当の成長率)

つまり、PER(0-1)が上昇するのは次のケースとなる。

・資本コストが小さくなる

・成長率が高くなる

・配当性向を上げる

PERが高いのは、①割高、②成長率が大きい、③リスクが小さいとき。

※本書を読むと、ある程度基本的な考え方が分かる。実践編は事例として面白い。