『金利と経済』(翁 邦雄著、ダイヤモンド社、2017年2月16日発行)

高度成長期規制金利、その中核は公定歩合。固定相場、少ない外貨準備。国際収支均衡重視、1973年には崩壊。

1970年代米国グレートインフレーション。1979ボルカ―の引き締め。

名目金利物価上昇率=実質金利。お金の貸し借りでは予想金利が重要。

実質金利名目金利ー予想インフレ率

2013年4月量的・質的金融緩和スタート

2016年1月ナイナス金利操作付き量的・質的金融緩和

2016年9月長短金利操作付き量的・質的金融緩和(短期金利マイナス0.1%、10年物長期金利0%近辺に誘導する。イールドカーブコントロールと名付ける。

中央銀行が作り出すお金は所得ではない。中央銀行国債を買って、代金を銀行の日銀当座預金に振り込む。これは流動性供給である。流動性の対価が金利であり、流動性を供給すると金利が下がる。

天皇陛下60周年記念貨幣10万円。減価は4万3千円。1100万枚発行されたが、10万枚いじょう偽造され、8万5千枚以上が日銀に還流した。日銀が受け入れて68億円の損失を出す。ヘリコプターマネーでも日銀のコスト(金利支払い)が発生しうる。

自然利子率(均衡実質金利、などとも)は完全雇用と見合う潜在GDPに対応する実質利子率。

1987年から2006年グリーンスパン。1990年代から2000年代初頭米国はグレート・モデレーション(大安定)の時代。1980年代のインフレ圧力は1990年代半ば以降休止した。1990年から2014年まで長期実質金利は低下傾向にある。直近はマイナス。自然利子率はさらに低下していないか?(長期停滞仮説)。

潜在成長率(トレンド成長率)は自然利子率と密接な関係がある。

自然利子率がマイナスの時代に、(景気刺激のため)実質金利を下げるには、期待インフレ率を上げるか、名目金利をマイナスにするかの2択。

マネタリーベース=日銀当座預金残高+銀行券発行残高

大規模緩和のマネタリーベース増大には、直接の金融緩和効果はない。見せ金に過ぎない。見せ金効果で予想インフレ率が上がることを狙ったもの。

1998年クルーグマンの提案から2015年クルーグマンの日本再考へ。日本は自然利子率がマイナスを恒常的に続けている可能性が大きい。

デンマーク国民銀行は2012年7月から預金金利にマイナス0.2%(企業の大口預金)。欧州中央銀行(ECB)は2014年6月政策金利をマイナス0.1%とする。スウェーデン、スイス、ノルウェーも導入。日銀は2016年1月末マイナス金利導入。

欧州の銀行は自国通貨高防止対策を押し出す国が多い。北欧ではリテイル決済に現金をほとんど使わない。ECBは高額紙幣の発行を停止。

マイナス金利の副作用として銀行システムの脆弱化がある。銀行資本蓄積が妨げられる。日銀のマイナス金利発表で銀行株が大幅下落。

欧州銀行は、資金運用利回りと資金調達利回りの差=利ザヤが大きかく、マイナス金利導入後も利ザヤは横這い。邦銀は利ザヤが小さく、マイナス金利導入でさらに小さくなった。日銀はマイナス金利深堀はやめた。

2016年9月21日イールドカーブコントロールを導入。短期金利マイナス0.1%、10年物0%近辺に誘導する。

金融政策効果の基本は、需要の底上げではなく、需要の前倒しという認識が広まっている。成長率を均すのみ。日銀は住宅需要の拡大を想定したが、住宅需要の底上げは人口動態などで決まるものなので、利下げで拡大すれば、後年に反動がある。日本の場合、自然利子率が下がっているときは、自然利子率を上げる、資源量を回復する政策が必要であって、金融政策ではない。

2013年のアベノミクス導入時の円安成功はそれまでの流れが円安に向かっていた。それに対して2016年1月のマイナス金利導入時は円高に向かう傾向のなかだった。その結果、マイナス金利導入後も円高に向かい、円安は達成できなかった。