『物価とはなにか』(渡辺 努著、講談社選書メチエ、2022年1月11日発行)

1974年は消費者物価指数CPIが前年比23%増加し、「狂乱物価」と名付けられた。このときはガソリンなど石油関連製品の値段が上がり、CPIも上がった。インフレの原因は原油高と信じられているが、その後の分析では原油高とCPIに因果関係がないことが示されている。真の原因は日銀による貨幣の供給過剰である。

米国では年齢が高くなると購買価格が下がる。しかし、日本では若い人の方が購買価格が小さく、年齢が上がると購買価格が上がる。pp. 70-71

ハイパーインフレは物価が毎月50%を超える勢いで上昇する現象。p.82

インフレは予想によって起きる。スーダンの高インフレでは物価が同じように上がり続けたが、それは売り手や労働者が物価上昇を予想して同じように値段の付け替えを行ったためだ。pp.87-89

フィリップス曲線:失業率が下がると賃金上昇率が高まる。p.123

自然失業率仮説式: インフレ率=インフレ予想ーa×失業率+b

予想が右辺に出るのは、価格の硬直性があるため。例えば、アパートの家賃をきめる大家は、インフレ予想を織り込んで家賃を決める。

その理由はメニューコスト仮説など。

なぜ物価が上がらないか。屈折需要曲線(p.255)によれば、価格を上げると消費者が逃げてしまう。鳥貴族の例。pp.271-272 価格硬直性の原因。

食料品の場合、小型・減量化で価格据え置きする実質値上が増えている。日本の消費者は気が付いている。減量化は新しい商品を開発するのと同じ位の努力が必要だが、新しい価値を生み出さない。社会コストになる。pp.276-285

デフレが原因で企業が価格支配力をなくし、価格支配力がなくなった企業は前に進む気力をなくしてしまう。コストカットは後ろ向きの動き。活力がなくなる。p.286

個々を足しても全体にならない。相互作用があるため。

流動性の罠貨幣需要が飽和すると中央銀行が貨幣量を増やしてもデフレ予想を覆せない。金融政策が効かなくなる。

インフレ率は、インフレ予想ではなく、ノルムで決まるという説(オーカン)もある。但し、学会の主流にはならないだろう。

グリーンスパンによる物価安定の定義「経済主体が意思決定を行うにあたり、将来の一般物価水準の変動をきにかけなくてもよい状態」インフレやデフレの真のコストは人々が自分の周りのことに関心を集中できなくなること。

フィッシャー指数:1年前と今年の同月の物価を計算するには、両方における商品のシェアを考慮すべき。(実際には、実現できていない。)たとえば、パンデミックの物価計測では、外食の価格だけでなく、外食のシェアが減ったという事実を加味すべき。政府の物価指数は、実際よりも1%低くなっている。