『金利を考える』(翁 邦雄著、ちくま新書、2024年10月10日初版)

いままで読んだ金利についての本の中では一番面白くお薦め。しかし、この本を読むと経済学者というのは実際の社会経済、実社会については子供レベルの知識しかないのではないか?という印象を受けてしまう。

金利は儲ける機会の大きい経済では高くなり、成長機会の少ない経済では安くなる。

ヒックスは金利は貸し倒れリスクに対するプレミアムという。借りた金が返済されるか不確実。借り手と貸し手に情報の非対称性があるため、金利は需給シグナルにならない。中古車市場はレモン市場(品質がわるい)。品質についての情報を買い手が知らない。品質を無視して、平均価格を付けると品質の良い車は売りに出されないので、市場には品質の悪い車だけが売り出される。結果、市場が成立しない。同じように高金利が踏み倒すつもりの客を集める結果になるかもしれない。

行動経済学。現在バイアスの罠。今の満足は明日の満足より突出して大きな価値がある。ダイエットは進まない。(p.068)

正倉院奈良時代の借金申込書100通が残っている。(p.082) 月13%または15%の高金利

サラ金グレーゾーン金利禁止2010年施行。多重債務原因の自殺は減少した。しかし、これでヤミ金が増えるのではないか? という懸念があり、闇バイトも増えている。

質屋型金融の復活は期待されていない?

住宅ローンの3タイプ:変動型、固定型、固定期間選択型。固定型の代表はフラット35(住宅金融支援機構が提供。機構債で資金集め。10年物国債利回りと連動する)。変動金利型は当面は金利が安い。しかし、イザとなると長期間の高金利に耐える必要があるかもしれない。変動金利型を選ぶ割合は、2013年では37.1%だったが、2023年時点では74.5%。

米国のサブプライム・ローンは金利リスクで破滅的結果となった。変動金利を当面安く抑えて、2000年代前半に大ヒット。住宅価格がバブル的に上がっていた間は問題にならなかった。住宅価格バブル崩壊前に家を売れば利益を得ることができたから。バブル崩壊で2006年から住宅ローン延滞率が急上昇。家を差し押さえられて失う人が増加。最後は2008年金融危機に至る。借り手はこうしたリスクに気が付いていなかった。

米国にはレッドライニングがあった。1930年代ニューディール政策の一環で創設された政府の持ち家対策プログラムに由来する。全米200以上の都市や町の近隣地域の融資価値のランク分け。(A)が最も優良、(D)が最も危険。D地域を赤でマーキングした。ほとんどが黒人居住地だった。

無限連鎖講(ねずみ講)「天下一家の会・第一相互研究会」

円安は輸出企業を潤し、家計に負担を与える。輸出数量はあまり変わらず、収入が増える。輸入額は概ね100兆円。20%の円安で金額がそれだけ増えるとすると20兆円。これは消費税10%の税収額にあたる。円安の家計への負担が大きい。