『金融工学の悪魔』(吉本 佳生著、日本評論社、1999年9月15日発行)

本書は、表題とは違って、金融工学を簡単な算数レベルで教えようというまじめな本である。内容は役に立つ実用的な考え方が盛り込まれている。

ポートフォリオ理論は、リスク資産を一つに集中させないで複数の資産をもつことでリスクを小さくする。資産を収益率の高さとリスクの大きさという二つの性質で性格付ける。リスクとは予想される収益率のばらつき。リスクと収益率の組み合わせをコントロールして効率的な資産運用を行う。

オプションとは、通貨・株式・債券などについて、ある期日に、ある数量を、ある価格で買う権利あるいは売る権利のこと。

買う権利ーコールオプション、売る権利ープットオプション

売買価格を権利行使価格(ストライク・プライス)、オプションの価格をプレミアムという。オプションは保険に似ている。 

コールオプションの買いは、買う権利(プレミアムを払うことで、通貨や株式を買っても買わなくても良いという選択権)があり、売りはプレミアムを受け取る代わりに相手が権利を行使したとき売る義務がある。買う人は有利な時に権利を行使するので、売る方は不利な時に売る義務を果たすことになる。

プットオプションの買いは売る権利(プレミアムを払うことで、通貨や株式を売っても売らなくても良いという選択権)があり、売りはプレミアムを受け取る代わりに相手が権利を行使したとき買う義務がある。

アメリカン・スタイルは満期日までならいつでもOK。ヨーロピアン・スタイルは満期日のみ権利行使できる。

オプションの価格は期待値で計算する。

先物取引は取引日よりも受渡日が先になる。契約条件をいま決めてしまう。取引所で規格化された条件の先物取引がフューチャー(通貨先物)。個別交渉で金額、受渡日を自由に決めるのがフォーワード。

為替予約は先物の一種。銀行と顧客の間の契約であり、フォーワードに分類される。先物のコストは金利である。為替予約は融資の一種ともいえる。

金利スワップは、信用度の異なる会社同士で金利だけを交換する。

ヘッジファンドは、グローバル型、マクロ型、マーケット・ニュートラル型の三つが代表的スタイルである。グローバル型は株式を中心に世界各国で資産運用する。マクロ型は世界のマクロ経済に注目し、株式・通貨・金利中心に運用する。マーケットニュートラルは類似性の強い資産の売りと買いを組み合わせてリスクを減らす運用スタイル。

マーチンゲールは最初は基本の賭け金で、負けた後の回は2倍の賭け金にする。勝ったら基本の賭け金に戻す。勝った回数×基本の賭け金の分だけ残る。

マーケットニュートラルは鞘取り。よく似た資産のうち、ひとつを売り、ひとつを買う。例えば、ドイツ国債を売り、イタリア国債を買う。するとリスクがゼロになるので、その金利差で儲ける。レバレッジを大きくする必要がある。ただし金融危機などで動きが変わると危険。LTCMの破産はこれが原因と考えられている。

輸出企業の通貨オプション戦略は、①なにもしない(円安で利益増、円高で損失増)、②ドルプットの買い(円安で利益増、円高で固定、プレミアムコストがかかる)、③為替予約(損益なし、予約コスト)、④ドルコールの売り(円安でプレミアム利益、円高で為替差損増)の4パターンになる。

プレミアムは、期待値+/- 金利差の半分。

ノックアウト・オプション、ゼロコスト・オプションは危険。