『操られる民主主義 デジタル・テクノロジーはいかにして社会を破壊するか』(ジェイミー・バートレット著、草思社、2018年9月発行)

本書は、インターネット・テクノロジーの民主主義への脅威を警告する。具体的な例としては、第3章 ビッグデータと大統領選が一番だ。2016年のアメリカ大統領選の「プロジェクト・アラモ」にはびっくりだ。

選挙の投票行動に影響を与えられそうな人を選んで、メッセージを送り、それによって投票行動を左右させる。これは技術的には可能なシナリオだが、実際にそんなことが行われていたらしい。

グーグルのメールやフェースブックには個人情報が筒抜けなので、それを分析すればその個人がどういう思考方法や行動パターンを取っているかを知って、影響を与えることはできる。

ケンブリッジ・アナリティカの他に、フェースブックやグーグルは派遣したスタッフがプロジェクト・アラモで机を並べて仕事をしていたとは。

情報による行動の操作! 自分達がやっている広告宣伝も行ってみればその一種ではあるが、個人をデータポイントとしてみて、ピンポイントでマッチする情報を流すことまでは意図的にはやっていないだろう。

クッキーを使って、前に訪問したWebページの広告をひたすら流すのは初歩的な意味では同じかもしれない。

有権者をデータポイントとして設定して、投票行動に影響を及ぼすようなメッセージを大量に流すことで、選挙やEUからの離脱などの国民投票に影響を与えているということだ。

広告の分野では、昔からこうした影響力が望ましかったのだが、選挙の投票行動も、購買行動も同じ扱いで良いかどうか?