『ケインズ 危機の時代の実践家』(伊藤 宣広著、岩波新書、2023年10月20日発行)

ケインズの経済学発展の経過をまとめた本。経済学は難しい。

あるものの価格が上がる、下がるは実感としては感知できるが、集合的現象になると説明しにくいためか? 特に国際為替が入ると複雑でわからない。

ケインズで一番印象に残っているのは、第一次大戦終了時のドイツ賠償金にかかる問題で、支払い可能な額を配慮すべきというのは正論であり、実に慧眼だと思う。

本書で印象に残るのは金本位制に関わる議論の箇所。1717年以来200年以上、金1オンス=3ポンド17シリング10ペンス半を維持してきたというくだり。

1919年3月19日金貨および金塊の輸出禁止。約5年間。ポンドの対ドルレートが下落。

戦後のインフレ。1920年2月1ポンド3.2ドル。1920年4月15日公定歩合を7%に引き上げ。~21年4月まで。

1920年夏戦後ブーム終焉。失業者増大とデフレ転換。

公定歩合引き下げ、1922年7月13日に3%の20年代最低。為替は4.70ドルまで上昇。

1923年7月5日デフレの中で公定歩合を4%に引き上げ。金本位性復帰のため。

米国の金不胎化政策:通貨発行量を金準備額と切り離し。

1925年3月初め失業率11%の中で公定歩合5%へ引き上げ。金本位制復帰準備。

1925年3月20日旧平価である1ポンド4.86ドルで英国は金(地金)本位制復帰。大蔵大臣チャーチル、首相ボールドウィン。400トロイオンス(約2.4kg)の金の延べ棒単位で交換。世界の金融の中心としての地位を強化につながる。しかし、国内経済は深刻なダメージを受ける。

フランス・フランは投機筋に攻撃され、戦後の1ポンド25.22フランから26年7月エリオ政権下で243フランまで下落。1926年7月フランスはポアンカレが首相に復帰、1ポンド124フランに固定。金融的に立ち直り、英仏衝突が起きる。フランスが金を吸収。

米国・1927年利下げ、ダウ平均は24年末から28年初頭にかけて2倍となる。28年2月公定歩合を3.5%から5%に利上げ。1929年8月9日、さらに6%に。イギリスも1929年9月に公定歩合を6.5%に引き上げ。1929年10月ウオール街の暴落が起きる。

1931年5月11日オーストリアの商業銀行危機が恐慌の引き金となり、イギリスは1931年7月19日金兌換停止。ポンド下落。イギリスの物価は1925年から1931年までで38%下落。金準備防衛のための引き締めが不要となる。