『ガリア戦記』(高橋 宏幸訳、岩波書店、2015年2月)

ガリア戦記、昔から一度読んでみたいと思っていたが、漸く念願かなう(というほどのことでもないが)。

カエサル自身が書いたのは、紀元前58年から同52年までの7年間で、1年ごとに1巻となっており、紀元前52年が第7巻となる。第8巻はヒルティウスが著したもので紀元前51年から50年の2年分である。

ブリタニアへは、前53年に小規模な上陸、前54年に大量の艦船を建造・調達して本格上陸する。

毎年冬場は軍団を各地に分散させて越冬して、春が来てから行動したようだ。軍団を各地に分散させることで勢力分散のリスクもあった。

ガリアは小さな部族に分かれており、一つの国としての支配体制ができていなかった点が、当時のローマ帝国と異なるのだが、部族ごとにリーダーがいて、その支配権争いがあったり、要は統一されていないためにローマに付け込まれる隙ができていたといえる。毎年カエサルの軍に負けているわけだが、何回負けても立ち上がって反乱を起こしているところを見ると、カエサルの獅子奮迅の働きも何のためなのか、理解に苦しむ面もある。

第7巻のウェルキンゲトリクスの反乱が一番ローマ軍に勝てそうに見えるが、なぜローマ軍が逆転勝利を収めえたのかあまり納得のいく記述がない。どうやら、ガリアの民族は、少しばかり劣勢になると恐怖に駆られて、軍勢も逃げ去ってしまったようなので、結局は統率力の問題なのかもしれない。結局、寄せ集めの集団である兵の恐怖心を如何に制御するか? 逆に、ローマ軍は長く戦ったプロ兵士の軍団であり、カエサルの統率力が勝利の要因だったのかもしれない。

全体を見ていえることは、戦争は当時も今も、あまり意味があるように思えないということである。