『NETFLIXコンテンツ帝国の野望 GAFAを越える最強IT企業』(ジーナ・キーティング著、新潮社、2019年6月発行)

NETFLIXの起業からダウンストリーミングによる配信が軌道に乗り始めるまでのディープなストーリーである。本書は、創業のコツやビジネスのアイデアが満ち溢れている。

主にブロックバスターという強力なライバルとの闘いの記録が興味深い。映画の媒体が映画館やケーブルテレビ、ビデオ(テープ)から、DVD媒体、ネットによる配信に代わるという技術の変化に乗って成長した。NETFLIX初期のDVD時代は、ネットでレンタル注文を受けて、翌日配達する仕組みへの挑戦であったが、本書(2011年頃)での最後の方は、ストリーミング配信への挑戦と成功である。

NETFLIXの起業者はマーク・ランドルフとリード・ヘイスティングで時期は1997年である。まだDVDが出始めの時代に、映画DVDをネットで注文を受けて、郵便で送るというビジネスである。2000年代終わりには、ストリーミング時代が到来する。あらゆるデバイスNETFLIXのアプリを組み込む。そして顧客データを蓄積して契約者の好みや行動を予測する技術を高める。本書が出版されたのは2011年である。その後、2012年頃にはハリウッドとの競争=コンテンツ制作に取り組み、エンターテインメント業界の秩序を塗り替えた。

NETFLIXが引き起こした環境激変:旧来のメディア企業の再編、例えばディズニーは713億ドルで21世紀フォックスを買収し、19年には「ディズニープラス」をローンチ、NETFLIXへのコンテンツ供給を停止する。

本書の魅力は、マーケティングの戦略を詳しく紹介しているのと、競争相手との闘いの記録である。ブロックバスターは、企業内でストリーミングの会社「ブロックバスター・オンライン」を立ち上げて、NETFLIXを追い込む。しかし、店舗とのカニ払いゼーション、CEOの退職と新CEOの実店舗回帰という戦略転換で「ブロックバスター・オンライン」は止まる。

ランドルフは、インターネットで何かを売る会社を起業しようと考える。ヘイスティングは当初は資本家である。ランドルフダイレクトマーケティングに魅せられた家族的経営。途中からヘイスティングス時代となる。アルゴリズムオタクでビジョナリーな経営者。ランドルフヘイスティングスはピュア・エイトリアでの仲間。ピュア・エイトリアはラショナルソフトウェアに買収され、ヘイスティングスは大きな利益を得る。通勤途上に企業のアイデアを語り合う。ネット上のオンライン店舗でDVDのレンタル事業の着想に至る。ヘイスティングスは200万ドル出資して、キャッシュとランドルフが、オンラインDVDレンタルの事業計画を作る。創業時は10人ほど。DVDはまだ試験的な販売の段階であった。顧客が仮想空間を訪問して注文する。DVD在庫は最大にできる。消費者に対してパーソナルな空間を演出する。