2020-01-01から1年間の記事一覧

『誤解 ヨーロッパVS日本』(エンディミオン・ウィルキンソン著、中央公論社、1980年6月20日発行)

著者は日本における最初のEC代表部員として1974年から1979年まで日本に滞在した。ECに帰任するにあたり、滞在中に学んだことをまとめた本である。主に貿易面での摩擦を文化的な関係でとらえようとしている。 著者はヨーロッパと日本のお互いの誤解について過…

『無念なり 近衛文麿の戦い』(大野 芳著、平凡社、2014年1月22日発行)

昭和12年6月1日近衛内閣成立。 7月7日深夜1か月で盧溝橋に銃声が轟いてから、悪名高い近衛の「国民政府を対手とせず」までの箇所。7月9日には首相、陸、海、外、大蔵の5相会談で不拡大を政府方針とし、臨時閣議で採択するにも関わらず、7月10日に陸軍から関…

『ヨーロッパ経済紀行』(新田 俊三著、NHKブックス、1994年3月30日発行)

著者の30有余年に渡るヨーロッパ訪問体験をまとめた書である。ドイツ、ウィーン、フランス、スペイン、イタリア、ポーランド、プラハ、フィンランドなどの御国事情、各都市と音楽の結びつき。旅情をそそりそうな駅や博物館などの体験を整理している。著者が…

『パリ物語』(宝木 範義著、新潮選書、1984年7月30日発行)

パリが現在の街並みになってきたころの様子を30トピックに渡って描写する。もともと『日本美術工芸』誌に1981年6月号から1983年12月号にかけて連載された記事を1冊にまとめた書である。 パリの街が形を整えたのは17世紀から19世紀のようだ。17世紀にルイ4世…

『砂漠の戦争 イラクを駆け抜けた友、奥克彦へ』(岡本 行夫著、文藝春秋、2004年7月発行)

米国が起こしたイラク戦争後、イラク復興の現場で銃撃されて死亡した外務省の奥克彦大使の活動を中心に、中東の歴史、米国の中東への取り組み、日本の主に小泉首相時代の活動を綴っている。 小泉時代に自衛隊がサマーラに出て復興支援をしたのだが、奥氏や岡…

『信長』(秋山 駿著、新潮社、1996年3月25日発行)

この本は小説ではない。信長という人物を解釈しようという解説書か? 人物評論あるいは評伝といったら良いか? 少しばかり変わった本である。 主に、『信長公記』を引いているが、それ以外に日本の書では、徳富蘇峰の『近世日本国民史』「織田信長」、新井白…

『ウイルス・ハンター』(エド・レジス著、早川書房、1997年8月発行)

1995年ザイールのキクウィト市で発生したエボラウィルス感染症に対する米国疾病対策センター(CDC)の対策班の活動を伏線に、CDCの歴史、さまざまなウィルスや細菌による感染症対策の話をちりばめた物語である。 マールブルグ、ラッサ、エボラという出血性ウ…

『2050年のメディア』(下山 進著、文藝春秋、2019年10月25日発行)

本書は、インターネットによる情報提供がもたらしたメディアの変化の物語である。紙からデジタルへの変化になんとか対応している日経。一方で、うまく変化できない読売新聞社。ヤフー・ジャパンはニュースからデータに変わる。 2018年1月5日読売講堂の賀詞交…

新型コロナウィルスCOVID-19と戦うための情報システムの必要性についてーその3

新型コロナウィルスとの戦いのための情報システムについて考える。前回[1]は確定情報を如何に早く集めるかを考えてみた。今回は別の側面から考えてみる。 「新型コロナウイルス感染症対策の状況分析・提言」(2020年4月1日)を読んで考えたことのメモ。対…

『アメリカの制裁外交』(杉田 弘毅著、岩波新書、2020年2月20日発行)

本書は読むとアメリカの制裁外交について、全体をうまくまとめて整理した本だ。前書きに「金融制裁も自らの痛みを伴わずに、相手にできるだけ多くの犠牲を強いるため、相手に与える負のインパクトへの思いが足りないのではないか」とある。本書を読むとまさ…

新型コロナウィルスCOVID-19と戦うための情報システムの必要性についてーその2

厚生労働省のCOVID-19感染者数公開データ 新型コロナウィルスCOVID-19の感染者数が急激に増加している。全国の感染者数のデータは、4月2日時点では厚生労働省Webサイトで次のページに公開されている。 新型コロナウイルス感染症に関する報道発表資料(発生状…

『歴史探偵団がゆく 昭和史が面白い』(半藤 一利編著、文藝春秋、1997年1月30日)

昭和のさまざまなできごとを当事者に近い人2人を交えて、半藤氏の司会で語った物語を集めた本である。28の話題があり、既に知っていたこともあるが、知らなかったできごと、表面的にのみ知っていたこと、懐かしいできごとなどがならんでいる。 できるだけ当…

新型コロナウィルスCOVID-19と戦うための情報システムの必要性について

まえがき 新型コロナウィルス(COVID-19)の日本の市中での新規感染者数は、2月中旬から急に増え始めたが、3月中旬になって頭打ちになり、3月21日には少し減り始めている。 図1 厚労省が毎日報告しているデータ[1]より、市中感染者(有症状)の過去14日間の…

コロナウィルスサイト・日本 1.北海道 北海道 新型コロナウイルスまとめサイト | 北海道 新型コロナウイルスまとめサイト 2.東京都 都内の最新感染動向 | 東京都 新型コロナウイルス感染症対策サイト 東京都新型コロナウイルス感染症モニタリング会議資…

『検証 経済暗雲』(西野 智彦著、岩波書店、2003年7月15日発行)

主にバブルが崩壊した後の1992年から1995年までの金融行政についてまとめた本である。前著の『検証 経済迷走』、『検証 経済失政』に至る前史にあたる。 〇寺村銀行局長の時代 1992年6月~1994年6月 主な課題は次の通り。 ・銀行の決算対策 ・貸し渋り問題 …

『検証 経済迷走』(西野 智彦著、岩波書店、2001年7月発行)

主に1998年の金融危機について、金融システムの安定化をめぐる迷走の報告である。後書きにいうように、98年の危機は官から政治に主導権が移った年のようだ。大きな要因は、大蔵省の解体と金融監督庁の誕生にある。自公与野党協議で金融再生法の成立。金融監…

『検証 経済失政』(軽部謙介・西野智彦著、岩波書店、1999年10月27日発行)

1996年11月7日第二次橋本内閣三塚大蔵大臣。翌日の初仕事は大阪府三福信用組合への業務停止命令への対応だった。 1996年11月11日橋本は三塚に金融ビッグバンを指示する。橋本行革路線。大蔵はビッグバンで銀行・金融システムが大変になるという認識が欠けて…

『アメリカはなぜ戦争に負け続けたのか 歴代大統領と失敗の戦後史』(ハーマン・ウルマン著、中央公論新社、2019年8月10日発行)

ケネディの世代は、大恐慌時代と第二次世界大戦が生み出した、無邪気な時代。ケネディは再軍備をして軍を増強することを公約にして当選した。そして、アメリカが有利だったにも関わらず、ミサイルギャップが存在すると誤認識していた。ピッグス湾侵攻、キュ…

『地球温暖化で雪は減るのか増えるのか問題』(川瀬 宏明著、ベレ出版、2019年12月25日発行)

本書の半分くらいは地球温暖化と関係なく、日本列島各地での雪の話である。そういう意味では、若干、タイトルに偽りありだ。 気になる地球温暖化の話は、後ろの方3分の1位であるが、気象庁のWebにあるデータを参考にしてほしいというような記述が目立つ。 …

『バブルと生きた男 ある日銀マンの記録』(植村 修一著、日本経済新聞社、2017年1月18日)

経済学の資産価格はその資産が将来にわたって生み出す収益の現在価値(ファンダメンタルズモデル)。ファンダメンタル価格との乖離が経済学的なバブル。バブルを防ぐのは個々の経済主体のリスク管理に尽きる。 1985年が転換点。その前後、大阪本社の企業が雪…

『検証 バブル失政』(軽部 謙介著、岩波書店、2015年9月25日発行)

本書はかなりの部分が日銀の金利政策の話になっている。日銀は当時は大蔵省や政治からの独立性が低かった。 1985年9月22日プラザ合意。円やマルクを上げて、世界貿易の不均衡を調整する。1986年4月19日、米国の公定歩合0.5%引き下げに協調して日本も公定歩合…

『投資で一番大切な20の教え 賢い投資家になるための隠れた常識』(ハワード・マークス、日本経済新聞出版社、2012年10月22日)

バリュー投資かつディフェンシブな投資家の考え方をまとめた書である。要は本質的価値を見極めろ、そして本質的価値を下回った時に買えということだ。非常に啓発的だが実践するのはなかなか難しいかもしれない。また、著者にとっては株式投資は中心ではない…

『ソロスの講義録 資本主義の呪縛を超えて』(ジョージ・ソロス著、講談社、2010年6月15日発行)

第1章 人間不確実性の原理では、社会科学は自然科学とは違うこと。社会的事象は思考する存在である人間が参加するので認識と現実の間に相互のフィードバックが働く。認知機能と操作機能は逆方向であり、両者が介在すると不確定性=ずれが生じる。ソロスはこ…

『モビリティ―サプライヤー進化論 CASE時代を勝ち抜くのは誰か』(アーサー・ディ・リトル・ジャパン著、日経BP、2019年12月23日発行)

自動車産業でCASE(コネクテッド、自動運転、シェアリングサービス、電動化)が進行。ダイムラーが2016年にCASEを唱えた。内燃機関からEV、燃料電池車(FCV)により、自動車部品出荷額の28%が影響を受ける。自動車産業はモビリティ産業に拡張される。日本の部…

『わが子をAIの奴隷にしないために』(竹内 薫著、新潮新書、2019年12月20日発行)

AI

斜めに読んだが、まじめに読む価値のある本ではない。

『1989年12月29日、日経平均3万8915円 元野村投信のファンドマネージャーが明かすバブル崩壊の真実』(近藤駿介著、河出書房新社、2018年5月20日発行)

1990年1月に株式バブルが崩壊したメカニズムを探求する書である。1980年後半のバブル経済をほとんど株式市場だけから見ているという制約があるので、日本経済のバブル崩壊の全体像との関係に説明不足感があるが、株式バブルについていえば、本書の分析はなか…

『「名経営者」はどこで間違ったのか ゴーンと日産、20年の光と影』(法木 英雄著、PHP研究所、2019年11月6日発行)

1970年代までは日産とトヨタはほぼ互角であった。80年代の海外展開で差が出た。1980年頃から差が開き、1990年には国内生産はトヨタが日産の倍になった。日産は1985年から2000年で国内生産が47%減少した。トヨタは、北米集中投資をしたのに、モデルも米国では…

『オランダ商館長が見た 江戸の災害』(フレデリック・クレインス著、講談社現代新書、2019年12月20日発行)

江戸時代、オランダとの貿易の為、長崎の出島にオランダ人が駐在していた。そのオランダ商館長は毎年1回交代するとともに、江戸まで来て将軍に拝謁していた。本書は、その商館長の公務日記に記載された日本の災害に関する記録をピックアップして編集したもの…

『重力波で見える宇宙のはじまり』(ピエール・ビネトリュイ著、講談社ブルーバックス、2017年8月20日発行)

この本は恐ろしく難しくてほとんど理解できなかった。なぜ、難しいと思うか? 高度な話を比喩的な説明をしているからか? 説明が抽象的・飛躍し過ぎ? 本書はタイトルを見て、重力波の話がメイントピックになっているかと思ったが、実際に読んでみると、重力…

『アジア経済とは何か 躍進のダイナミズムと日本の活路』(後藤 健太著、中公新書、2019年12月25日発行)

21世紀のアジア経済はグローバル・バリューチェーンの時代(p.ii)。アジアの都市での生活パターンは先進国と類似する。都市部と農村部の格差が大きい(p.v)。 戦前の日本にとってアジアとは中国であった。しかし、1949年に共産党支配の中国ができたことで…