『アメリカはなぜ戦争に負け続けたのか 歴代大統領と失敗の戦後史』(ハーマン・ウルマン著、中央公論新社、2019年8月10日発行)

ケネディの世代は、大恐慌時代と第二次世界大戦が生み出した、無邪気な時代。ケネディ再軍備をして軍を増強することを公約にして当選した。そして、アメリカが有利だったにも関わらず、ミサイルギャップが存在すると誤認識していた。ピッグス湾侵攻、キューバミサイル危機、ベトナム戦争とジェムの失脚は健全さを欠いた戦略的思考と不十分な状況把握が根本にある。イデオロギーが健全な戦略的思考にとって代わった。

ケネディやその後の大統領による戦後アメリカによる武力行使はほとんど失敗してきた。その原因は大統領の資質にある。

失敗の根本的な原因は戦略的思考の欠如にある、また、武力行使が必要になるかもしれない状況についての理解と知識が欠けていた。決定の根拠となる前提に厳しく疑いを投げかけなかった。大統領による戦争または武力行使の決断が、のちに間違っていたとわかる前提に基礎を置いていた。

戦略的思考の三つの要素:

一、問題を取り巻く状況について深い理解と知識をもつ

二、時代とともに変わりゆく戦略的環境を理解する。21世紀の現実に基づく思考法。

三、政策の目的は、標的の認識を変え、影響を与え、コントロールすることで達成する。

エストファリア体制ではだめな理由の三つの現実。

一、世界最強の軍隊でも決意を固めた敵を倒すには苦労する。

一、非対称の紛争では、敵はコスト交差比率や政治的発言、プロパガンダを利用する。

一、相互確証混乱。

頭脳ベースアプローチをとるべき。知識と理解からスタートする。第2次世界大戦イギリスのプレッチリ―・パークが暗号解読した。それと同じような役割の組織が必要だ。イギリスには第77旅団(実際に動くことなく軍事目的を達成する)、第一ISR(開かれた情報源を利用して知識を収集する)の二つの旅団が取り組みを開始している。