『避けられる戦争 米中危機が招く破滅的な未来』(ケビン・ラッド著、東京堂出版、2024年3月10日発行)

2020年習近平の新時代経済思想が「新発展理念」にまとめられた。これは「自立自強」、「双循環経済」、「共同富裕」の3本柱からなる。

一体一路は陸のシルクロードと海のシルクロードがある。インド洋の周辺では軍事に使える港の整備を進めている。経済的プレゼンスを中心に中東の各国との関与を深めている。イランとの協力関係。米国のこれまでの中東戦略のミスを繰り返さないように注意しているようだ。2017年にはイスラエルとの包括的なイノベーション提携契約を結んだ。ファーウェイは湾岸協力会議(GCC)の全加盟国で営業認可を取得し、中東全域で5Gネットワークを整備している。

中国の中東政策は米国の失敗を学んでいるようだ(p.269)。また途上国への協力は、継続的であり、プロジェクトで失敗しても学んで調整するなど見事なものがある(p.287)。

2014年11月の党中央外事工作会議で習均平は多国間活動主義という新概念を打ち出した。未来の世界秩序を巡る新たな闘争があることを指摘し、その秩序の中で、中国は世界の舞台の中心に近づき、人類により大きな貢献をする時代になるとした。

習近平の世界観によれば、国家社会主義と民主主義的資本主義の間で新たなイデオロギー闘争が起きており、中国はそれに勝利する決意だ。(p.321)

中国共産党の政治的正当性の源泉は三つ。マルクス・レーニン主義イデオロギ―、経済の繁栄、中国のナショナリズム。今後10年を見たときに、ナショナリズムが危険なワイルドカードになる。