『プーチンの国家戦略 岐路に立つ「強国ロシア」』(小泉 悠、東京堂出版、2016年10月)

ロシア・プーチンというと、まず、資源・エネルギーという印象があったが、軍事や紛争、クレムリンの権力争い、宗教、宇宙まで踏み込んで解説する意欲的な書である。

著者は30代前半であるがロシアの軍事や宇宙戦略を研究する専門家がいると言うことにも少しばかり驚いた。

ロシアは、大国ソ連の後継者という虚像があるが、大国であることを渇望しつつも実態が経済規模などでもそう大きくはない、ということが良く分かる。

例えば、ソ連といえば、米国を凌ぐ宇宙大国というイメージがある。

しかし実態は、宇宙技術にしてもかなりの部分はウクライナで生産されたもの、宇宙基地はカザフスタン依存が大きかったというように、ソ連の解体でロシアにとっては外国依存になってしまった部分がある。また1991年から20年以上を過ぎて、この間、経済危機や民主化で研究開発の担い手がいなくなり、設備や機器が老朽化してしまった。

また、宗教問題、シロヴィキの台頭なども本書で新しく取り上げた内容とのことだが、興味深い。

このところ、クリミア統合やウクライナ紛争、シリアへのミサイル攻撃などで強面・戦争を辞さない、また軍事大国プーチンという印象がある。

ところで、本書では傍注にこんなのがある。