『夢遊病者たち』(クリストファー・クラーク、小原淳訳、みすず書房、2017年1月)

第一次大戦がどのように起きたかを、起きる前のバルカン半島の状況から物語風に描く。

第1巻
第1章はセルビアである。まず、1903年6月11日午前2時過ぎに起きたセルビアでの王と王妃の虐殺から始まる。

1912年10月〜13年5月の第一次バルカン戦争、1913年6〜7月の第二次バルカン戦争のあと、1914年6月28日朝に起きたオーストリア=ハンガリーのフランツ・フェルディナント大公の暗殺の計画を語る。

第2章はオーストリア=ハンガリー帝国の話。西のドイツ人と東のハンガリー人の二つの支配民族の国がそれぞれ独自の議会を持ち、それをハプスブルグ二重君主国という二元主義の帝国。
但し、ハプスブルグ帝国は第一次大戦前の10年間は繁栄の時期であった。皇帝フランツ・ヨーゼフ。

1878年ボスニア=ヘルツェゴビナを併合しようとする。セルビア問題。

第3章はヨーロッパの同盟関係の変化。ドイツ、フランス、イギリス、ロシアの間の同盟関係は、1887年から1907年の20年間で変質した。

第4章はヨーロッパ外交。君主、政府、外務省という特殊な集団。誰が国を治めているのか分かりにくい。軍と民政の力関係。

こうしてみるだけでも着眼点が面白いことが分かる。

第2巻
第5章 バルカンの混迷は第一次世界大戦はもともと第三次バルカン戦争であったとする。バルカン戦争の流れを語る。

第6章 最後のチャンス
第7章 サライエヴォの殺人
第8章 広がる殺人
第9章 サンクトペテルブルグのフランス人
第10章 最後通牒
第11章 威嚇射撃
第12章 最後の日々

この本を読んでしまったらもう第一次世界大戦の本を読もうという気持ちが起きなくなってしまった。第一次大戦に関する本の決定版かな。