『候補者ジェレミー・コービン』(アレックス・ナンズ著、岩波書店、2019年4月)

2015年5月のイギリス労働党党首選で、ずっと泡沫候補と考えられていた労働党左派ジェレミー・コービンが候補者となり、大勢の予想に反して党首に選ばれた。さらに、2017年6月の総選挙では、トニー・ブレア以来の歴史的な躍進でテリーザ・メイの保守党を単独過半数割れに追い込む。この間の事情を詳細にルポしたもので、大半はコービンチーム選挙戦の活動や戦術等や、コービンの人間性/政治活動、既存の労働党議会政治家や事務局の抵抗などに関する話である。労働党の他派閥とのうちわもめの話や、ミクロの選挙運動などの話が中心で、大局的な話が少ないのは残念だが、イギリスで出版された本なので大局は周知のことなのかもしれない。

第4章候補者名簿に載るまでにあるように、党首選に名乗りを上げるには35名の議員の推薦が必要で、これに苦労した。コービンへの推薦人を集めるのには、Twitterからの支援依頼。facebookのページなどSNSの影響が大きかった。

第5章チームコービンの結成。DIYプロジェクト=草の根運動に支えられる。選挙対策本部長サイモンフレッチャー(選挙のデジタルテクノロジー)+事務所+地域オーガナイザー+ボランティア+ソーシャルネットワーク。団体の推薦で一位になる。潜在的な要望があった。

草の根のコービン運動、若者の多くが労働党に投票する。

大局的な背景としては、サッチャー主義の経済コンセンサスである新自由主義が2008年のリーマンショックで失敗が明らかになったことがあるようだ。コービンは労働党左派で、反緊縮経済政策、移民は反対しない、BREXITは反対。労働党左派は凋落してきたが、大衆の支持があって大回復を遂げたようだ。ここ5年位のブームなのかもしれない。労働党トニー・ブレアのニューレイバーの時代があったが、ブレア派も崩壊した。