『バルカン―「ヨーロッパの火薬庫」の歴史』(マーク・マゾワー著、中公新書、2017年6月発行)

本書は2000年に発行された本の翻訳である。オスマン帝国時代、19世紀、20世紀の第一次戦争前、第二次世界大戦後=ギリシャ以外は共産圏の時代、最後はソ連崩壊後の話(少し)である。

バルカンという地域は理解するのが難しい。オスマン時代はヨーロッパよりかなり遅れていたようだが、主として宗教によって人が生活していたので、ナショナリズムはなかった。

ナショナリズムを持ち込んだのは西欧の国々であったようだ。

第一次大戦オスマントルコが滅んだが、そのころからナショナリズムによって国を立てる動きが始まったようだ。その典型はユーゴスラビアである。ユーゴスラビアは、1919年のヴェルサイユ条約で、「セルビア人・クロアチア人・スロヴェニア人王国」として設立されたが、1929年にユーゴスラビアという名前に変わった。こうして西ヨーロッパにとっての東方問題は終わった。

その後、第二次大戦となり、その終結時、チャーチルスターリンによって、ギリシャ以外は共産圏に入った。

共産圏においてはナショナリズムは凍結されたが、ソ連崩壊と共にナショナリズムが復活したようだ。

ユーゴスラビアは、スロヴェニアセルビアクロアチアボスニア・ヘルツェゴビナモンテネグロなどの民族国家に分裂した。その過程でユーゴスラビア紛争があった。このように、ナショナリズムの発現として、民族紛争が多発した。

その後、バルカンの国々はユーロに加盟する。

ユーロの目標は、統一ヨーロッパであったが、現在は、ユーロ自身が分裂の危機に瀕している。