『物語 アラビアの歴史』(蔀 勇造、中公新書、2018年7月発行)

アラビア半島地域を中心に、紀元前から現代までの歴史を物語る意欲的な本だ。一読する価値はある。しかし、いろいろ似たような名前が山ほど出てきて区別が付かないので困るし、読むのに結構時間がかかってしまったが。

彼らは家系を大変重視しているようだが、しかし、それだけに家系の相続争いが厳しい。親子・兄弟でもクーデターで王朝をひっくり返しているのは毎度のこと。このあたりは日本人にはまったく理解できないのではないだろうか。長子相続が基本の農業社会と力の強いものに継承する略奪社会の相違と説明されているけれども。現代のアラビアは比較的国家が長く存続しているようではあったが、シリアの争いなどを見るとまったく変化していないとも言える。

アラビアの歴史を大きく分けると、イスラム教の誕生前と誕生後になる。イスラム教といってもいろいろな分派があり複雑ではあるが、なぜそんなに分派するならイスラム教になったのかということも不思議だ。