『絵草紙屋 江戸の浮世絵ショップ』(鈴木 俊幸著、平凡社、2010年発行)

江戸の終わり頃から明治の初めに掛けての、絵草紙を流通(版元、絵草紙屋)の状況をから見た本である。

書籍が人生・社会にとって不変の価値を持つものであり、姿勢を正して紐解くものなのに対して、絵草紙は無駄で自由気ままなもの。行ってみればいまのコミックに繋がるようなものであろうか(って、最近知ったのだが)。

また、草紙は今を追いかける情報商売でもあった。

地本=江戸の本が成立し、その代表が浮世絵。最初は黒摺りであったが、だんだん色が増えてきて、フルカラー印刷の錦絵がにいたる。1765年には錦絵の交換会が始まっている。

錦絵の創始者は鈴木春信とのこと。

錦絵は、明治20年代の終わり頃には写真や絵はがきにその座を譲って消えていったようだ。

本書では、この間の錦絵の版元や小売店である絵草紙屋の品揃えや、店頭の様子を多様な確度からまとめて紹介している。

興味深いと共に、日本独自の木版の多色刷りが、明治中頃に消滅してしまったのが寂しい。