『足利将軍たちの戦国乱世 応仁の乱後、七代の奮闘』(山田 康弘著、中公新書、2023年8月25日発行)

戦国時代も将軍の利用価値があったという点に着目したのは慧眼。

足利幕府は直轄領が少なく、直轄する軍事力もないため、大名に依存せざるを得なかったという点が、徳川時代とは大きく異なる。徳川は最後は軍事力で勝ち残った政権でもある。それにしても、足利尊氏というとマイナーな存在だが、足利幕府が15代200年あまりも続いたのを改めて認識して、少し驚いた。

日本の戦国時代を現在のグローバルな世界、すなわち国民国家の群立と国連などの実力軍を持たない国際機関という構図に見立てる考え方も面白い。現在、世界各国の時間距離、相互依存関係は、戦国時代の大名間と同じくらい距離の距離感といえるのかもしれない。

本書の見立ては地政学とはまた違った観点で面白い。地政学は国連などの調整役を考慮せず、パワーセンターがどこかを見て、その構造で戦略を立てるのだろう。地球の陸地をプレートで分割するプレートテクトニクス的な2次元な見方のようだ。