『コンテナから読む世界経済』(松田 琢磨著、KADOKAWA、2023年3月29日発行)

大豆輸送でみるとばら積み船では出発港と到着港にサイロ設備があって船積する。コンテナ輸送では、バンニング施設でコンテナ詰めする。輸送運賃はばら積み船がコンテナの数分の1。しかし、ばら積みでは数千トン~数万トン単位の量を必要とし、さまざまな生産者の大豆が混ぜられる。コンテナ輸送では20トン単位でひと箱にして輸送できる。混ざり合うことがなく、最終目的地まで封印して運べる。

1990年から2018年まで世界全体のGDPは3.6倍になった。海上輸送量は42.9億トンから118.9億トンと2.8倍となった。コンテナ化により生産拠点の分散、グローバルサプライチェーンの確立を促した。コンテナ化は1980年代から本格化した。リーマンショックの前までは、コンテナ貨物の量はGDP成長率の3倍で成長した。リーマンショック以降は乗数が小さくなっており、コンテナ輸送の伸びは鈍化傾向にある。

コンテナ輸送量は住宅市況、自動車製造状況に関係深い。米国の住宅許可件数は荷動きに1年程度先行する。

日本の主要船主は1円円高になると売上90億円、利益9億円減少する。近年は売上、費用のドル建てが進捗。外航運賃は84%ドル建て、対して鉄鋼は33%で最低。

コンテナはリース会社が半分、海運会社が半分持っている。リース会社のコンテナを海運会社が借り、荷主が借りる。コロナ過ではコンテナが不足した。これは2019年の米中貿易摩擦に伴って荷動き低迷を予想してリース会社が新造コンテナ発注を抑制したため。三菱HCキャピタルの子会社のシェア15%。

二大基幹航路はアジア・北米、アジア・欧州。行きと帰りで荷物の量が違う(インバランス)ので空のコンテナの回送が必須となる。北米航路は中国コスコ、マースク、ONEの順位。

世界最大のコンテナ港は上海、2位がシンガポール。日本は存在感が小さくなっており、東京港が46位で最上位。

ハブ&スポーク方式なので、コンテナの積み替え(トランシップ)が行われる。シンガポールはトランシップ貨物が中心。マレーシアが追い上げている。ハブ港とフィーダー港。トランシップ比率は25%程度になっている。

コンテナ船が大型化。2022年竣工のエバーアロット号は船長400m・24000TEUで最大。18000TEU以上152隻。2022年後半から大型船中心に船舶が増加中。

TEU:長さ20フィートコンテナに換算したコンテナ個数の単位。

日本海事センター 運賃データ CCFI(中国コンテナ運賃指数)、SCFI(上海コンテナ運賃指数)。

ONE:2022年9月時点で201隻、149.7万TEU、世界7位。日本発着、北米航路を中心に運行。親会社から船を借りて48隻発注済み。2025年初の自社保有船10隻。

アライアンス方式:運賃や営業活動は各社自由。スペース融通、コンテナターミナル共同利用、運行スケジュール調整などの業務提携。2M、TA、OAの3つ。

2010年代後半のコンテナ海運市況悪化は船舶数の増加に相応する輸送量が増えなかったため。2007年米国住宅バブル崩壊がきっかけ。

コンテナ船はスケジュールに沿った定期運航を行う。運行遅延では抜港や欠便する。

運賃は2022年末に2020年初と同じくらいまで落ちた。一方、原油価格高騰と環境対応投資の為、コストがアップしている。2023年から新造船の竣工ラッシュとなり、船舶量が増える見込み。供給過剰懸念がある。

低速化で燃料節約効果が大きい。EEXI規制:既存船の燃費性能を新造船並みにする義務化。CII格付けのため減速運行が進む。リーマンショック以前は25ノット(時速46キロ)、2012年頃は20ノット、2022年は14ノット(時速26キロ)に低下。

日本のコンテナ輸送にしめる存在感は小さい。欧米へのコンテナ輸出では韓国、ベトナム、タイ、インドより小さい。米国行きコンテナ輸送の日本のシェアは2.7%しかない。