『日の丸コンテナ会社 ONEはなぜ成功したのか?』(幡野武彦・松田琢磨著、日経BP、2023年2月13日発行)

2017年7月川崎汽船商船三井日本郵船の3社がONEを設立。共同持ち株会社は、郵船38%、川崎汽船31%、商船三井31%の割合で出資、その100%出資の事業運営会社がOcean Network Express Pte. Ltd(シンガポール本社)。

約200隻のコンテナ船を運航、170万本のコンテナを使った輸送サービスを展開。2021年度は日本企業第2位の最終利益。2022年度予想も利益2兆円超え。

コンテナ事業は3社とも赤字が多かった。赤字事業を本体から切り離して事業統合。日の丸事業統合会社はどこも失敗するなか、純粋な民主導の統合で成功した。成功要因はシンガポールという出島に設立したこと。本社に忖度する必要がなく、セロから新しい組織を設計、重要な意思決定が速くできた。

4年でMSC(スイス)、APモラー・マースク(デンマーク)、CMA CGM(フランス)、中国遠洋海運集団(COSCO)、ハパックロイド(ドイツ)、長栄海運(台湾)に次いで世界7位(2022年11月)に躍進した。

2009年リーマンショック、2010年は中国政府の景気刺激策で一時的回復、2011年マースクショックにより、MISCが撤退。2016年世界の海運業界大再編に至る。2016年韓進海運破綻。USACとハパックロイド合併。2017年3アライアンスに集約。2M(マースク、MSC、ザ・アライアンス(ONE、韓国HMM、ハパックロイド、陽明海運)、オーシャンアライアンス(中国系)。コンテナ船事業は装置産業の傾向があり、固定費が大きい。

日本の海運大手は総合経営を強みとしてきた。しかし、各事業が小粒になる。専業海運会社と比べて出遅れる。コンテナ船事業は投資額が大きく、サービスの差別化が困難、大型船が有利だが、コンテナが地上まで運ばれ、利益管理がコンテナ単位になるためシステムは複雑になる。

コロナ過が、サービス開始3年目にあたる。初年度は赤字、2年目は黒字に転換する。2年目までに組織体制ができていたので混乱に対応できた。資本構成上は日本企業だが、シンガポールに本拠を置く会社は少ない中、ONEはシンガポール政府にとっても重要な存在。

イールドマネジメントは航空機、ホテルなどコストに対する固定費の割合が高く、商品の在庫ができない業界の手法で、単位当たり収益の最大化を目指す手法。コンテナの原価計算は格段に難度が高い。

ONEは収益性でハバックロイドを逆転した。