『よくわかる最新パワー半導体の基本と仕組み 第3版』(佐藤 淳一著、秀和システム、2022年6月10日)

パワー半導体とは、AC⇒DC(コンバータ)、DC⇒AC(インバータ)、電圧、周波数など電力の変換を行う。

2020年世界の半導体バイス市場は50兆円。パワー半導体は2兆8千億円程度(p.22,80)。

パワー半導体は単機能半導体ディスクリート半導体

FET:電界効果トランジスタ

一般MOSFETはp型シリコンウェーハ上につくるソースとドレインは表面につくり、電流が表面を流れる。パワーMOSFETはn型シリコンウェーハ(FZ結晶)でソースは表面、ドレイン電極はウェーハ裏面にあり、電流はウェーハ内を流れる。

シリコンは真正半導体でキャリアが少なく電気伝導性がない。キャリアとなるシリコン以外の不純物の原子を入れる。n型半導体はシリコンより電子の多いP(リン)などを供給、p型半導体はシリコンより電子の少ないB(硼素)などを供給したもの。

トランジスタ:キャリアの送り手、受け手と、オン・オフ制御を行う3端子デバイス。電流制御がバイポーラ型、電圧制御がMOS型(MOSFET)。MOSFETは耐圧が弱い。駆動電力はバイポーラが大きい。MOSFETは高速スイッチング時に駆動電力が大きくなる。IGBTはバイポーラとMOSFETを組み合わせて高速で駆動力アップ。

AC⇒DC変換は、昔は水銀整流器(1960年代後半撤退)、いまはサイリスタ(シリコン背制御する整流器)。

シリコンウェーハの規格はSEMIが決めている。Siemens法:珪石を炭素還元して金属シリコンにし、精製してシリコン多結晶にする。多結晶シリコンのメーカはトクヤマ

単結晶にする方法は、チョクラルスキ―法(CZ法)とフローティングゾーン法(FZ法)があり、CZ法はLSI用、FZ法はパワー半導体用に多くつかわれる。パワー半導体でも低耐圧品はCZ法で作られる。

CZ法:引き上げ法で単結晶化し、ワイヤソーでウェーハに切断する。12インチ迄実用化。石英坩堝を使う。1990年代12インチ(300㎜)化。不純物は多結晶シリコンを溶融する際に追加する。偏析現象が起き、ウェーハを切り出した位置で不純物濃度が変る。n型、p型のウェーハがある。

FZ法:種結晶を付けて、RFコイルで加熱、ウェーハの大口径化には向かない。2000年代8インチ化。酸素濃度が低い、高純度、高抵抗のウェーハを作れる。偏析がない。ガスドーピング法、中性子照射法などの新しい不純物添加方がある。多結晶シリコンの均質な品質が要求される。

シリコンの物性的限界がありSiC(炭化珪素)、GaN(窒化ガリウム)などワイドギャップ半導体の探索が行われている。SiCは5%に満たない。SiCの方が耐圧性能が良いので小型化できる。耐熱性も良い。EVなどへの利用が考えられている。GaNによるブレークスルーも。GaNは発光ダイオードにも使われる。

車載用パワー半導体は、バッテリー電圧の昇圧、降圧に用いられる。

パワー半導体は、材料が命。シリコンからSiCが実用化されつつあり、GaNが研究開発中。

MOS LSIはシリコンウェーハの表面の一部だけに電流が流れる。また、回路ブロックを積層する。パワーMOSFETは縦型構造。

前工程は化学的プロセス、後工程は機械的な加工が多い。前工程と後工程でプロービングして、不良品は後工程に流さない。

ダイシング。ダイヤモンドブレードを回転させて切る。SiCは固いので超音波ブレード、レーザソーなども考えられている。

ダイボンディング。基板に貼り付ける。MOS LSIではリード線とチップの間のワイヤボンディングは細い金のワイヤを使う。最近は銅ワイヤも使われる。パワー半導体は、アルミニウムが多かったが、最近は銅が使われる。MOS LSIはボールボンディング、パワー半導体はウエッジボンディング。

モールディングは金型とエポキシ樹脂を使う。次世代のパワー半導体では耐熱性樹脂が必要。

2020年半導体メーカ:首位はインテル三星、SK Hynix、Micron、QualcommBroadcom、TI、MediaTekNVIDIAが続く。

独自性よりも低コストへ。パラダイムシフト。ファブレスメーカとファウンドリーへ。

日本のLSI事業は分社してきた。日立と三菱はエルピーダメモリ(その後、マイクロンに買収された)、東芝はキオクシアに。日立と三菱のロジック、マイコン事業はルネサスエレクトロニクスに統合。しかし、パワー半導体が各社自社内に保っている。カスタム要素が大きい。専業メーカ:富士電機、新電元、サンケン電気。部品メーカから参入例:ローム、京セラが日本インターを買収。

パワー半導体は、大規模投資の必要性が比較的少なく、少量多品種に対応する必要性があるので臨機応変なファブが求められる。但し、日本は囲い込みが多く、欧米に遅れるかもしれない。

欧州ではシーメンスから独立したインフィニオン、イタリアとフランスの合併:STマイクロ、オランダのNexperia(フィリップス系)が三強。

米国はオン・セミコンダクター社(モトローラから1999年独立)し、フェアチャイルドを買収。ビシェイインターテックは1962年創業、ディスクリート半導体の最大手。

パワー半導体にはLSIのような概念はないが、パワーモジュールの概念がある。IPM(インテリジェント・パワーモジュール)。1チップに集積するものではない。

冷却モジュール。