『物語世界の書籍出版社』(出川 沙美雄著、日本エディタースクール出版部、1982年5月10日発行)

世界の書籍出版社という題名であるが、どちらかというと書籍出版社の歴史あるいは創業者の話が中心である。

出版は優れて個人の才覚に依存するところが多いようだが、本書にもいろいろユニークな人物像が描かれている。

出版社の国際化に長年取り組んで来た著者の体験談が多いだけに、理論的というよりも、感性的な面白さを感じる。

ただし、その中にも新しい出版流通のアイデアの話がいくつか登場している。

オムニバス版文学全集は、一つの全集を乗合自動車に見立てて参加出版社が一冊ずつ責任分担して総合的な全集にするもの(p.5)。

ペーパーバック:ペンギン。軽装本。破格の安値。大量生産・大量販売、雑誌配本機構により、書店以外のルート、百貨店、キオスク、文房具店などを経由して販売。

イタリアのリッツォリ社:百科事典の個別訪問販売。イタリア人は書店に来ないので、出版社が家まで売りに行く。

パートワーク出版:欧米は書籍と雑誌のルートが違う。書店は書籍専門であり、ざっしはニューススタンドやキオスクで売られる。ファブリ社は、豪華美術本や図版入りの百科事典を大項目別に分冊特集として、テーマ別の読み切り物語形式の週刊誌として、雑誌の即売スタンドで販売して成功した。