『オスマン帝国』(小笠原 弘幸著、中公新書、2018年12月25日発行)

オスマン帝国の成立から滅亡までの通史である。歴代の全ての国王(帝王というべきか)の肖像写真を掲載するという面白い試みもある。あとがきには、意図的に全ての国王に言及したとある。

その一方でざっと流した解説はやや突っ込み不足という感もある。

しかし、オスマンの王家による支配が長く続いたのは、兄弟殺しにより、王位継承後の内紛の芽を摘んだというのはなかなか難しい話である。どんな組織も権力の継承が難しく、権力を継承した後の内紛が滅亡のきっかけになっているのは、人間の性の闇を示している。内紛を避けるために、王位を継承したら、残りの兄弟を殺してしまうというのは尋常な神経とも思えないのだが。それほどまでに権力が魅力的なものなのか?

王の母の大半が奴隷であったのも、外戚の影響を避けるためということなので、権力をスムースに継承することへのこだわりは、徹底している。

ここまでしても王自身、人生を最後まで生きた人は少なかったようにも見える。

こうしてみると、オスマン帝国は、長く続いただけであまり魅力的な、面白い、楽しい帝国ではないとも言えそうだが。