『重力波とはなにか 「時空のさざなみ」が拓く新たな宇宙論』(安東 正樹著、講談社ブルーバックス、2016年9月発行)

重力波についてあまたある書の中ではかなり良い。類書の中ではトップ2,3位と言える。それにしても重力波の本は結構増えているものだ。

ちょっと難しげに見えるが、かなり子細な説明があるので、重力波とはなにかも良く理解できそうな気がする。重力波を計測する仕組みについての説明も具体的だし、初めて直接観測されるまでの準備、予行演習もクドくなく丁度良いボリュームで紹介されている。

特に、著者は重力波を観測する機器の設計が専門のようだ。そこで、本書の中では観測機器の開発への挑戦の話が一番具体的である。重力波を最初に観測したのは米国をLIGOであるが、欧州でも日本でも観測に挑戦しており、国際協力によって観測されていること、さらには電波・X線・可視光の望遠鏡のネットワーク観測態勢があることなど、観測の話が面白い。

重力波天文学に何が期待されているか、そして光や電磁波とは何が違うかも理解し易く書かれている。

超弦理論、あるいは、ガンマ線バーストとか、インフレーション、暗黒エネルギー、暗黒物質、宇宙の加速膨張など宇宙天文学ではいろいろとまだ分からない点が多く、重力波天文学がこれらの疑問を解決する手段になりそうな点も良く理解できる。