『月はすごい 資源・開発・移住』(佐伯 和人著、中公新書、2019年9月25日発行)

月の資源開発、移住、他の惑星探査への基地という観点から月について解説する面白い書である。

月面には1ミリメートルよりも小さな隕石でも秒速10キロメートル以上の速度で落ちてくる。月面の岩石は隕石に砕かれてレゴリスという細かな砂になる。このため月の表面の光の反射光が散乱するので、満月はお盆のように見える。

月の表面の岩石には数ナノから数十ナノサイズの鉄の粒があり、宇宙風化で赤くなる。月のクレーターからの条線はレイという。レイは隕石が掘り返した地中の岩石で白っぽいが、10億年で宇宙風化により見えなくなる。

月探査船が宇宙で受ける放射線の量を想定した機材の製造が必要だ。

月の南極と北極に大量の水素があることがわかった。もしかすると月に氷の状態で、水があるかもしれない。月の極地には永久に太陽の光の影になる場所があり、永久影では零下190度になるので、一旦凍ったら永久に残る。月の極地には水があるかもしれない。水の有無は決着がついていない。

月表面の岩石と鉱物。

原子力発電のためのウランは月にあるが、精製できる濃度かどうかは不明である。

土地資源は重要。夜は2週間続くため、この間、太陽電池が使えず機器が壊れる。極地方に高日照率の地域があるが、限られており貴重な資源だ。次は地下の溶岩洞窟への竪穴が貴重な資源である。

2010年代終わり頃から月探査ブームになっている。日本の民間企業ispace社も月着率探査機を計画しているとのこと。本書にはispace社は2021年と2023年に打ち上げるとしているが、Webをみると少し遅れているようだ。

2007年のJAXAの月周回衛星で人材育成。2021年度JAXAはSLIMという小型月着陸実証機を打ち上げる予定。次はインドと共同で南極の永久影の氷の存在を確認する探査計画がある。

 新しい情報は、文部科学省・宇宙開発利用部会「国際宇宙ステーション・国際宇宙探査小委員会」のWebサイトを見よ。

宇宙開発利用部会 国際宇宙ステーション・国際宇宙探査小委員会:文部科学省