『古文書の面白さ』(北小路 健著、新潮選書、1984年11月20日発行)

古文書研究者としての道を志しながら、満州事変・満州国設立から志那事変へと続く戦争のただ中で満州に渡り、終戦時に書物をソ連兵に焼き捨てられるまでの経緯、新京から大連への決死行など日中戦争の前後の時代の話が面白い。今のような落ち着いた時代とは違って、体と勇気一つで稼いで生きていかねばならないという切迫した時代の雰囲気を味わえる。

日本に帰還してからは明治時代の民権運動から始まり、遊女の歴史、島崎藤村『夜明け前』がどのようにできたか木曽路をたどり、また伊那路の文献探しの旅なども興味深い。