『欧州分裂クライシス ポピュリズム革命はどこに向かうか』(熊谷 徹著、NHK出版新書、2020年3月20日発行)

2020年1月31日英国が欧州連合EU)を離脱。離脱推進派は、ブレグジット党のナイジェル・ファラージボリス・ジョンソン首相。2016年の国民投票による。

ファラージは、2006年から2009年、2010年から2016年まで英国独立党(UKIP)の党首を務めた。欧州統合に反対。EUは英国の自由を奪う有害な存在と主張。UKIPは2010年の欧州議会選挙で得票率16.6%に倍増、第二党となる。キャメロン首相(2010年~)はUKIPの圧力に屈して国民投票を約束する。UKIPは2014年欧州議会選挙で27.7%を取りトップとなる。2018年UKIPで極右の勢力が増えたため、離脱してブレグジット党を結成。2019年5月の欧州議会選挙でブレグジット党は30.5%の得票率。

離脱派(ヴォート・リーブ)の重鎮ボリス・ジョンソン日和見で事実を重んじない傾向がある。離脱派は外国人への反感を煽り、EUへの拠出金の大きさを訴えた。しかし、事実に基づいていない点が多かった。東欧からの労働移民の急増で英国労働者に不安感があった。ファラージは難民の写真を使って不安感をあおった。

ブレグジット直接民主主義の危険性を示す例である。

欧州統合はエリートのプロジェクト。

ドイツでは、「ドイツの為の選択肢(AfD)」が躍進。2017年の総選挙で、キリスト教民主・社会同盟(CDU・CSU)、ドイツ社会民主党SPD)といった伝統政党に次ぐ第3党となった。メルケル政権への抗議としてAfDに投票する人が多かった。AfDはナチスの過去との対決を疑問視する政党。AfDの最右翼「翼」。AfDはもともと反EUの穏健政党だったが、右翼が支配するようになった。

2015年のシリア難民危機でメルケル超法規的措置により、2年間で122万人の難民が亡命申請した。この間米国は43万人、フランスは12万人である。ドイツだけが大規模な受け入れを行い、社会の不安を招いた。難民は失業者より優遇されているという妬みもある。

東ドイツにAfD支持者が多い。東ドイツの労働者はドイツ統合時の被害者意識がある。西ドイツと東ドイツではドイツ人意識が違う。社会主義時代の東ドイツではナチスへの犯罪との対決を行ってこなかった。ネオナチの増加。排外思想がある。

ネットの世界でのフェイクニュースヘイトスピーチの増加で言葉の暴力が増えている。