『敗北者達 第一次世界大戦はなぜ終わりそこねたのか 1917-1923』(ローベルト・ゲルヴァルト著、みすず書房、2019年2月発行)

本書を読むと、20世紀の前半は世界中で清算な暴力の嵐が吹き荒れた時代であったという印象が強くなる。特に、第一次大戦で戦争が総力戦となり、大がかりな殺戮の場所となった。一方、戦争の間の期間について、これまでは、第一次大戦と第二次大戦の間に、つかの間の平穏な時期があったと考えていたのだが、どうやらそうではないらしい。むしろ、第一次大戦はうまく終結しないで、戦争の後に、混乱の種を蒔いたとも言える。

そういう意味では本書の着眼点は良い。というか、自分が知らなかっただけかもしれないが。

ドイツ、東ヨーロッパ、バルカンからアナトリア半島、ロシアで戦争の後の混乱があった。第一次世界大戦を期に、ドイツ帝国、ハプスブルグのオーストリア=ハンガリー帝国、オスマン帝国という三つの帝国が崩壊し、またロマノフ王朝も崩壊したのだから大きな混乱は当然といえば当然である。

その混乱の軸は、一つには共産主義革命・ボルシェヴィキと白軍との戦いである。もう一つは民族主義ナショナリズムという新しい運動である。そして、それらの相克から、ファシズムが生まれてきたのだ。それに、第一次大戦後のギリシャとトルコの戦争の例がある。これはどちらかというと領土を増やそうという野心がもたらした戦争ではないか。

ヨーロッパの歴史は激しい。日本のような海に囲まれた国土ではなく、地続きの国土、それにより国境線の問題・国境画定の難しさ。それに伴う戦いなど、いろいろな混乱の要素には事欠かない。日本で言えば、戦国時代並の戦いが20世紀の前半に行われたのである。さらに言えば、民族浄化のような激しい殺戮もヨーロッパの歴史の特徴ではないか? 民族とは文化・言語・宗教などが一体化したものだろうが。なぜ妥協ができないのか? お互いに価値を認めて仲良くできないか。