『平成金融史 バブル崩壊からアベノミクスまで』(西野智彦著、中公新書、2019年4月発行)

実に良く取材している。平成のバブル崩壊とその対策の素晴らしい整理である。現在行われている黒田バズーカ異時元緩和の結果はまだどうなるか分からない。しかし、いままでの整理のみでいうならば、小手先の対策と先送りで傷を深くした印象がある。では直ちに抜本的な対策がとれたかというと難しいかもしれない。しかし、本質的な問題はバブルに踊ってしまった金融機関にあると言える。ほとんどの人達が原理原則を忘れている。

改めて読み返しているとこと。本書は何が起きたかを為政者側の取材を中心にまとめたもので、なぜ起きたかということはあまり追及していない。近藤駿介氏の指定のとおり、株と土地は原因が異なるようだ。(2020/1/19)

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1989年1月バブル絶頂、1990年1月株価暴落開始。株式が暴落を始めてから、土地バブル崩壊までは少し間がある。株式が暴落を始めてからも日銀の公定歩合が上がっており8月には6%、長期金利は8%になった。

1989年12月土地基本法、1990年3月27日不動産総量規制通達。土地バブル崩壊

1991年金融不祥事続発。暮れソ連崩壊。

1992年公表不良債権8兆円、内部調査では40数兆円。

1992年8月 宮澤首相、大蔵、経済界の危機意識の相違あり。大蔵も経済界も株は回復すると考えていたようだ。住専問題先送り。「不良債権の山を自己責任で解決するには時間をかけるしかない」(たぶん正しい。だから前提が誤りなのだ)。住専は農林問題。兵庫銀行資金繰り危機。

1993年住専破綻問題再び。釜石信金破綻。三行合併案=徳陽シティ(赤字)救済策(実らず)。兵銀救済策⇒延期(大蔵反対)。東京協和、安全信組問題。

1994年末東京協和+安全信組→東京共同銀行構想。問題の多い会社の救済に批判相次ぐ。

1995年3月東京共同銀行開業。阪神・淡路震災、兵庫銀行破綻⇒みどり銀行(受け皿)設立。超円高。コスモ信金業務停止⇒東京共同銀行が受け皿。木津信組業務停止。兵庫銀行再建断念⇒みどり銀行。大和銀NY事件。住専処理に公的資金

1996年橋本政権。金融ビッグバン構想。太平洋銀行⇒さくら銀行(受け皿)設立。阪和銀行、資金繰り破綻ではなく、業務停止命令による。清算銀行方式:紀伊金管理銀行(戦後初)。

1997年日債銀救済。リストラと増資。日産生命保険の業務停止命令。三洋証券危機、国際証券への売却破談。拓銀危機、道銀との合併破談。福徳、なにわの特定合併⇒なみはや銀行(2年半後破綻)。三洋証券11月3日法的整理、会社更生法。三洋証券の調達した資金はデフォルトとなる。その日は静か、一週間後に波乱広がる。11月14日拓銀の資金繰り破綻⇒17日北洋銀行に営業譲渡発表。山一自主廃業へ。11月20日日銀特融は出ない⇒海外銀行へ波及する⇒日銀総裁判断で特融。11月24日山一証券の廃業届け。11月25日紀陽銀行取り付け。11月26日徳陽シティ銀行(宮城)破綻。全国で取り付け。11月26日に金融システム崩壊に最も近づく。

 1998年金融危機管理審査委員会(佐々波委員会)で銀行への資本注入。少額横並びの失敗。大蔵省・日銀の接待汚職捜査。日本たたき。6月長銀危機。大蔵解体、金融監督庁発足。長銀・住友信託(合併?)案。首相公邸で説得も住信社長は言質を与えず。長銀は10月破綻認定による国有化・新生銀行になる。その後、新生銀行リップルウッドに10億円で売却となる。11月日債銀の金融監督庁検査2700億円債務超過報告。余命一ヶ月。国有化。1998年度29銀行が破綻。

1999年金融再生委員会で再度(第二次)資本注入。金融界の経営統合ラッシュ。みずほ、住友とさくら、りそな、UFJグループ誕生。資金運用部ショック。金利上昇円高・株安。ゼロ金利第二地方銀行など大量破綻。保険会社も破綻増える。第二代金融再生委員長。ペイオフ延期。

2000年速水総裁のゼロ金利解除。裏目にでる。

2001年財務省へ。小泉内閣。経済悪化し、不良債権やまずさらに増える。柳沢金融改革vs竹中改革。

2002年株価低迷一万円切る。金融不安再び。日銀が株を買い取る。柳沢解任。竹中金融再生プログラム(急進改革)。銀行の増資と不良債権処理進む。三井住友はわかしお銀行と逆さ合併。

2003年連休前平均株価7607円。りそな過小資本問題。監査法人が降りる。破綻していないのに危機認定で救済。株価は回復。日銀の為替介入・緩和。足利銀行危機。国有化・破綻処理。日銀特融は最後となる。平成中21回発動。UFJの検査忌避、追い込み。三菱UFJ誕生。不良債権処理収束。外需主導の景気回復により不良債権が戻り益となった面もある。不良債権総額は112兆円。

 2006年3月量的緩和解除。7月ゼロ金利解除。0.25%。9月安倍内閣

2007年7月0.5%景気に陰り、利上げ打ち止め。7月参議院選、安倍自民大敗

2008年サブプライム問題。リーマン危機。9月15日米リーマンCHP11、日リーマン業務停止命令。9月16日民事再生法の申請。米では危機の連鎖。株価暴落・10月27日日経平均7162円。バブル後最安値。円高ドル安。大和生保破綻。107円⇒90円。

2009年夏の総選挙で民主党が圧勝。鳩山内閣ギリシャ危機。

2010年JAL会社更生法日本振興銀行・経営陣逮捕・初のペイオフ実施41億円カット。新銀行東京。平成期の銀行など破綻182件。平成元年990行の18%が破綻した。昭和金融恐慌は16%。

2011年3月11日東日本大震災。10月75円代。

2012年安倍返り咲き。リフレ論者の集結。無制限の金融緩和によるデフレ脱却。アベノミクス相場開始。

2013年1月22日金融政策会議で2%の物価目標。白川総裁辞任。黒田バズーカ。異次元緩和。

2014年CPIはマイナスから+1.5%、13年度成長率2.6%。4月消費税8%。円安・株高さらに。

2015年中国ショック。円高・株安へ。

2016年円高進む。マイナス金利。金融業は構造不況業種になる。

日銀が保有する国債は2018年9月末で469兆円、発行残高の43%を占める。

◇関連書籍

『1989年12月29日、日経平均3万8915円 元野村投信のファンドマネージャーが明かすバブル崩壊の真実』(近藤駿介著、河出書房新社、2018年5月20日発行) - anone200909’s diary

『バブル 日本迷走の原点』(水野 健二著、新潮文庫、令和元年5月1日発行、原本は2016年11月刊) - anone200909’s diary

『検証 バブル失政』(軽部 謙介著、岩波書店、2015年9月25日発行) - anone200909’s diary