『「円安大転換」後の日本経済 為替は予想インフレ率の差で動く』(村上 尚己著、光文社新書、2013年3月20日発行)

この人はリフレ論者であり、金融緩和を為替レート、あるいは為替相場への投資の観点でみているようだ。全体的に相関関係を因果関係と見做す論理展開が多い。例えば、デフレと自殺者に因果関係があると見做している。(p.88)

また、出来事を為替レート中心に見ているため、「円高に振れる⇒株価が下がる⇒GDPが減少⇒労働者の所得が減少する」というような因果関係が起きると説明する(p.123)。

為替レートに関する議論だけにしておけば良いモノを、金融が実体経済を支配すると言う偏った思い込みがあまりにも酷い。見方が偏り過ぎている。 

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第2章をみると、2国間の為替レートは両国のインフレ率の差によって変動する。むしろ予想(期待)インフレ率の差によって動くのであるが、外為市場に参加しているすべての投資家の予想インフレ率の差は測定できない。そこでベースマネー比率で予想インフレ率の格差を代替する。為替市場におけるドルの総量が円の総量を上まわると円高になる。(ソロスチャート)

但し、ベースマネー比率以外の要因で予想インフレ率が動くことがある。

第3章 円高シンドローム仮説:米国の政策による円高圧力⇒円高イメージの形成でベースマネー比率からずれる。LTCMの破綻で1998年10月20日1日10円円高が発生。

2007年8月パリバショック:顧客資産の償還を見合せ。

2008年9月リーマンショック⇒2008年9月からFRBの大規模緩和に対して日銀のベースマネーはほぼ一定。このため日米ベースマネー比率が上昇し、1ドル110円から2012年1月の75円にまで超円高になる。デフレ下で起きる円高で日本人が貧乏になる。

バブル生成期から2011年夏までのドル円相場には、日米ベースマネー比率に加えて、日米の金融政策の姿勢による予想インフレ率(格差)の形成が影響を与えている。

 第4章「中央銀行が、入り口の部分でマネーの総量を絞ったら、日本経済全体に、十分にマネーが行き渡らず、その結果として不況が起きる」(←あまりにもビジネスというものを知らなさすぎではないか?)