『第三帝国の興亡 5』(ウイリアム・シャイラー著、東京創元社、1961年刊)

いよいよラスト ナチドイツの滅亡の巻である。

新秩序の章は、ユダヤ人の虐殺を中心とするナチの暴虐の限りの話で、あまりにもおぞましく、読むに堪えない。一人ではなく、集団でこのような行為がなされるということが恐ろしい。集団がリーダー次第でどうにでもなるということを示しているといえるが。

また、ヒトラー暗殺の企てがなんども失敗している様は、暗殺者側の信念や願望の弱さを示している。ヒトラーを暗殺したいと考えた人は大勢いたのだろうが、実行に移した人が少なかったのは、爆弾などの資源はもとより勇気をもった人が少なかったといえる。また、路上のテロとは違い、その後の計画とか実行能力も必要である。

また、ヒトラーの用心深い行動や強運もあったのだが。

ヒトラーの最後についても詳しく書かれており、第1巻〜第5巻を通じて実によく調べて書いているといえる。

本書を読めば、人間とその集団の行動の一面を理解することができる。特にリーダーの資質やその判断が重要である。リーダーの周りに似たような集団ができる。その集団が完全に国家権力を握ってしまえば、一般の国民には逃げるか、従うかの選択肢しかなくなる。