『時空のさざなみ 重力波天文学の夜明け』(ホヴァート・シリング著、化学同人、2017年12月26日発行)

重力波は、2015年9月に初めて直接観測された。電荷を加速すると電磁気が発生する。それと同じように、重力のあるものを加速すると重力波が発生するかもしれない、と考えられた。

重力波が存在するかどうかは、一般相対性理論から予測できそうだが計算が難しい。アインシュタイン自身が何回か論文を間違えて書き直しているくらい難解らしい。

典型的には、ブラックホール同士が合体するとき、二つのブラックホールが回転しながら引き合って結合する。このとき回転の速度がどんどん上がっていく。二つのブラックホールが結合すると質量はその和よりも少なくなり、余った分が重力波などのエネルギーとして放出されると予想される。

1968年にジョー・ウェーバーが共振検出器により発見したと唱えたが誤りだった。同じような検出器がいろいろ作られたらしい。

中性子星は回転して磁軸にそって電磁気を発生する。磁軸が地球の方を向いたとき電磁気が計測できるのでそれはパルスとなる。このような星をパルサーという。パルサーは1967年に初めて発見された。

二つの中性子星がお互いに回転する連星パルサーでは、その回転速度が徐々時上がっていく。それはパルスの周期からわかる。そのとき、失われるエネルギーは重力波となることが予想される。

1993年にノーベル物理学賞が、「新種のパルサーの発見、重力の研究に新たな可能性を開いた発見」として、ジョー・ティーラーとラッセル・ハルスに与えられた。これは間接的な重力波の存在証明である。

重力波を直接観測したのは、米国のレーザー干渉型重力波天文台(KIGO)である。

米国のLIGOは、一辺4kmのL字型の観測装置である。ルイジアナ州リヴィングストンとワシントン州ハンフォードにある。ペアにすることで周辺などで発生するノイズを無視できるようになる。

LIGOプロジェクトの創始者はレイナー・ワイス(1932年生まれ)。1972年にMITの四半期進捗報告にレーザー干渉計の基本原理を掲載した。

1980年頃には重力波物理学はレーザー干渉計に狙いが定まる。1989年12月にLIGOの最終案が全米科学財団に提出される。

紆余曲折があり、1994年夏NSFの認可を得る。

この本は内容もすごい面白いが、取材による臨場感がすごい。まぎれなく最高の科学の本といえる。

https://nl.wikipedia.org/wiki/Govert_Schilling