『重力で宇宙を見る 重力波と重力レンズが明かす、宇宙はじまりの謎』(二間瀬 敏史著、河出書房新社、2017年10月発行)

重力波の本は、三冊目だが、この本はその道の専門家が書いている割には分かりやすい。好著だと思う。

ブラックホール一般相対性理論の説明もいろいろ絵があって良い。

例えば、連星パルサーで重力波が発見された話は、既にシリングの本で知っていたが、より具体的で分かりやすい説明がある。

但し、むしろ本書は、後半の重力レンズの話に大きな特徴がある。

重力レンズは、大きな質量をもつ星団などの回りで光がレンズで屈折するように、屈折することである。

レンズ効果をもつ星団などの背後の星から来る光が重力レンズによって2つにみえたり、リング状に見えることがある。

現代の宇宙論には、暗黒物質と暗黒エネルギーという二つの謎がある。銀河団の運動から推定した質量と、光から推定した質量の差は大きい。また、星雲の回転速度から推定した質量と、星雲の星の分布から推定した質量にも差が大きい。この差は行方不明の質量であり、暗黒物質という。暗黒物質は引力を及ぼすエネルギーである。

一方、反発力を及ぼすエネルギーもあり、これを暗黒エネルギーという。暗黒エネルギーは宇宙の加速膨張をもたらすもの。

重力レンズ暗黒物質や暗黒エネルギーを観測できるという。