『ライブドア監査人の告白』(田中慎一著、ダイヤモンド社、2006年5月25日発行)

ライブドアの監査は、港陽監査法人が手掛けた。著者は2004年7月港陽監査法人に入り、2005年9月期の第2四半期からライブドアの監査報告書に署名している。

2006年1月16日ライブドア強制捜査、1月23日堀江逮捕、風説の流布と偽計取引の容疑で2月13日起訴。2月22日堀江再逮捕、有価証券報告書虚偽記載容疑で3月14日起訴。

ライブドアマーケティング(LDM)の自己株売却益還流スキームで儲けて、それを資本取引にかかわらず、売上に計上して利益を偽装した。2004年10月25日LDMはマネーライフ社株式交換で買収すると発表。実際にはそれ以前にVLMA2号ファンド(LDが実質支配する)で株式を取得していたので、身内の取引であった。これを第3者から取得するように情報を開示した。また、11月8日にLDMの株式100分割を発表。11月12日には本来赤字のLDMの決算を黒字であるとして情報を流した。これでキャピタルゲインを得た。同様なことをクラサワ社の買収でも行っている。ライブドア株とクラサワ株を株式交換で取得、その直後にM&Aチャレンジャーファンドがライブドア株をクラサワ社から現金で買い取る。同ファンドはさらにライブドア株を出資してVLMA1号、2号ファンドを組成する。1号、2号は株価が上昇したときにそれを売却して利益を得る。これをライブドアファンドに配当として、ライブドアの連結売上に計上した。これは単なる自己取引なので資本取引である。売上に計上するのは粉飾にあたる。

第2は自己株還流スキームと預金の付け替え。預金の付け替えは2004年9月期の決算で、ロイヤル信販キューズ・ネットを相手とする架空売り上げ15億円による。監査チームはこれを見つけて疑わしいとし、売上取り消しを迫ろうとした。監査人の久野氏、監査役とともに事業部長にインタビューした。取引の実在性を確認できなかったが、粉飾とも確証を得られない。担当の宮内氏は署名した。

M&Aの会計処理は、持ち分プーリング法とパーチェス法がある。持ち分プーリング法とは、買収対象会社の価値を簿価純資産で計上する。パーチェス法は払った金額で計上する。簿価純資産を超えて払った分は、連結調整勘定(のれん、営業権)としてバランスシートに計上する。これは超過収益力と解釈し、日本の会計ルールでは20年以内の任意期間で均等償却する。

株式交換は実際はエクイティファイナンス(新株発行を伴う資金調達)で調達した現金で買収対象企業の株式を購入するのと変わらない。

持ち分プーリング法でもパーチェス法でも企業価値は変わらない。株価上は中立のはず。企業価値は理論的には毎年のキャッシュフローで決まるため。

ライブドアは柱になる事業が曖昧だった。ポータルサイトは売上が少なく、グループ企業の証券・ベンチャー企業投資が中心であった。ライブドア本体はメディア、モバイル、コンサルティングなどであったが赤字で鳴かず飛ばず状態。広告収入は不振。ライブドアデパートはビジネスになっておらず。割安な会社を見つけて、安く買って高く売ることをしていただけ。

通常の粉飾決算は倒産を回避するために行うが、ライブドアの粉飾は時価総額を大きくするためのもの。ライブドア経営陣は、現実に現金が増えているのだからやっても構わないと思ったのだろう。

※財)財務会計基準機構が2003年10月に企業結合に係る会計基準を包括的ルールを決め、2007年3月期からパーチェス法で処理するようになった。

※捜査当局は、9月30日に宮内氏が事業部長に一斉にメールを送っていたというが、9月末決算の数字を9月30日とは?

ライブドアとライブドアマーケティング株、4月14日に上場廃止 - CNET Japan