『地球の中身 何があるのか、何が起きているのか』(廣瀬 敬著、講談社ブルーバックス、2022年1月20日発行)

地震波には横波と縦波があり、初期微動は縦波、主要動は横波。横波は液体中を伝わらない。マントルは横波を伝える。マグマは深いところから上がってくる。

地球の半径は6370km、地殻(厚さ6~30km)、地殻の下がマントル(地表から2890kmまで)、コア(外核は半径3480km、内核は半径1220km)。コアは主に鉄でできている。

地殻とマントルは化学組成に基づく分類で、プレート(リソスフェア)は力学的性質が剛体である。厚さ100km。プレートの下のアセノスフェアは変形・流動する。

大気は高度500kmまで存在する。対流圏、成層圏(15km~50km)、中間圏(50km~80km)、熱圏(80km以上)に分けられる。高度100km以降が宇宙。ISSは高度400km。成層圏オゾン層がある。

熱の伝わり方には伝導、放射、対流(熱対流、組成対流)がある。

大気の組成:窒素78%、酸素:21%、アルゴン:0.9%、二酸化炭素:0.042%。

対流圏のうち、地上から高さ1kmにある大気境界層までは対流で混ざっている。その上に摩擦の影響を受けない自由大気があり、地球の自転(赤道上で時速1700km)の影響で複雑な流れになっている。

1気圧(atm)=1013.25hPa。標高0mが1気圧。

海水を全部まとめると半径700kmの水滴になる。海水の流れは表層水、深層水に分けられる、表層水は風で駆動される。深層水には熱塩循環とも言われる循環がある。

岩石は主に花崗岩玄武岩。水を含んだ低温のマグマが固まると花崗岩になり、水を含まない高温のマグマが急に固まると玄武岩になる。二次的にできた岩石に堆積岩や変成岩がある。

マントル最上部はプレートのぶつかり合いで地上に出ていることがあり、岩石を採取できる。主体はカンラン石であるが、風化しやすく蛇紋石に変わってしまう。北海道日高山脈の幌満岩体ではカンラン石が見つかる。キンバ―ライトは高速に噴出するマグマで、通り道がダイヤモンド鉱山になっている。ダイヤモンドは5万気圧(地下150km)で作られる。ダイヤモンド鉱山でマントルの岩石を採取できる。

地中に地震波速度の不連続面がある。地殻とマントルの境界はモホロビッチ不連続面、またマントル中でも410km、660km、2600kmにある。岩石が違う。上部マントルは410kmまででカンラン岩、660kmまでマントル遷移層、下部マントル、最下部マントルに分かれる。深部マントルの岩はダイヤモンド・アンビル・セルで加圧し、レーザーで熱を加えて合成する。カンラン石に高圧をかけると相転移する。地震波速度不連続面は相転移する深さに凡そ対応する。

地震震源をプロットして線でつなぐと、地球全体は十数枚のプレートに分かれる。大きなプレートは7枚。日本列島はユーラシアプレートと北米プレートに載っている。その下に、東から太平洋プレート、南からフィリピン海プレートが沈み込んでいる。プレートは固有の回転軸(オイラー軸)の周りを回転運動している。プレートテクトニクスは1967年ダン・ピーター・マッケンジーが最初に論文を書いた。中央海嶺で新しい海洋プレートが生産される。大陸のプレートは軽く、海のプレートは重いので、両者がぶつかると海のプレートが地球内部にもぐる。沈み込み帯で地震が起き、火山帯ができる。海洋プレートの水がマントル岩石の融点を下げてマグマを作る。海洋プレートの沈み込んでいる部分をスラブという。地震波トモグラフィで見るとスラブは深さ660kmから1000kmで溜まる=スタグナント・スラブという。周囲の岩石は660kmで相転移して重くなるが、スラブは温度が低いので相転移が起きず軽いので浮力を受けるため。

マントルは岩石だが流動性がありマントル対流する。速度は年間数cm、2億年で1回転。マントル対流はプレートの動きと関わっている。マントルの温度推定は、浅いところはマグマから深いところは地震波速度の不連続面の深さから推定できる。玄武岩質マグマはマントル最上位の岩石が1300度Cで融けてできる。深さ410kmで1400度C、660kmで1600度C、2600kmで2200度C。

ホットスポットは高温のマントルが深部から上昇する場所。外殻の熱でマントルの底が暖められて上昇流が起きる。

外殻は液体の鉄、内殻は固体の鉄。外殻は流動性が高いが地震波から上部と下部の地震波の速度は遅い。内殻は不均質で、地震波の速度が方向により違う。コアは純粋の鉄ではなく軽元素を含むが、何かはわかっていない。外殻の対流で地球磁場が作られる(ダイナモ理論)。外殻の対流運動は見えないので推測であるが、内殻を避けるため地球の自転軸に沿ったらせん運動のはず。S/N極は数万年から数十万年単位で入れ替わってきた。その理由は不明。内殻は地球の自転より早く回転している(スーパーローテ―ション)。

岩石に磁場が固定されること=古磁気学の研究対象。海洋底の磁気異常を発見し、磁気の最後の反転は77万年前。千葉の地層に記録されている=チバニアン:77万4千年前~12万9千年前まで。

地球磁場により、宇宙線太陽風が地上に届かない。また、大気の剥ぎ取りを防いでいる。火星は磁場がなかったので大気が失われた。

45億年前は地球の表面がマグマオーシャンだった。月のマグマオ―シャンから推定。月の高地(白い部分)は斜長岩。黒い部分は玄武岩。斜長岩はマグマより軽いので浮いた。月には結晶化しにくい元素が集まったKREEP岩もある。K:カリウム、REE:レアアース、P:リン。

惑星形成の標準モデル「京都モデル」1970年代~1980年代に確立した。分子雲の中に星ができる⇒原始惑星系円盤の形成⇒微惑星(岩石型、氷型)⇒ジャイアント・インパクト⇒岩石惑星、小惑星帯、巨大ガス惑星、巨大氷惑星に集結する。地球はジャイアント・インパクトで月ができた。また地球は1万度を超えてすべてリセットされてマグマ・オーシャンとなった。

地球ができたのが46億年前というのは、コンドライト隕石の形成年代による。一番古い岩石は40億年前。46億年前~40億年前が冥王代、40億年前~25億年前が太古代。冥王代にできたジルコン鉱物は44億3千年前にできた。

生命の痕跡を残す最も古い岩石(堆積岩)は、グリーンランドのイスアにある38億年前のもの。

地球の大気組成は、火星や金星とは違う。金星・火星は95%以上が二酸化炭素。地球は窒素78%、酸素21%。二酸化炭素は炭素循環で地球内部に隔離され、酸素は光合成で作られた。27億年前にはシアノバクテリア光合成をしていた。23億年前に大酸化イベント、6億年前の酸素急増で現在のレベルになった。その後5億4200万~5億3000万年前にカンブリア大爆発で生物が大進化した。

地殻・マントルの進化。コアの進化。コアがマントルから分離、その後内殻ができる。

地球の水は微惑星から来た。水は地球の内部に蓄えられた。

『ヨーロッパ冷戦史』(山本健著、ちくま新書、2021年2月10日発行)

北大西洋条約。1949年4月、アメリカ、カナダ、イギリス、フランス、ベルギー、オランダ、ルクセンブルグ、イタリア、デンマークノルウェーポルトガルアイスランドの12か国で調印。北欧から地中海まで相互防衛の軍事同盟。北大西洋条約機構NATO)となる。1950年の朝鮮戦争を機に、東ドイツが西ドイツに武力侵攻の可能性を暗示させられて、50年12月60師団規模のNATOの統一軍創設が決まる。欧州連合軍最高司令部設置。52年2月NATO軍を96師団に拡大する中期防衛計画。(実際はそんなに増えなかった)。ギリシャとトルコが加盟。

53年1月アイゼンハワー政権はニュールック戦略=アメリカの核の傘ソ連の攻撃に各で反応する。通常戦力は大きくしない。米国の派遣軍は削減したい。55年パリ協定で西ドイツが主権を回復、NATOに加盟した。15番目。西ドイツの再軍備NATOの枠内となる。55年5月ワルシャワ条約で東の軍事同盟成立して、東西の同盟ができる。

57年12月NATO理事会で核共有を承認し、イギリス、イタリア、トルコにミサイル配備、アイゼンハワー政権末期までに500発の核弾頭がNATO諸国に配備された。NATOは通常戦力の不足を核に依存した。

ドゴールはアメリカとNATOに批判的。66年フランスはNATO軍事機構から脱退すると宣言。またフランスに駐留する外国軍の撤退も要求(フランス問題)。

60年代NATOは柔軟反応戦略を採用した。62年5月表明、67年5月NATOの戦略となる。従来のように核で大量報復即応ではなく、当初は通常戦力で柔軟に対応する。ワルシャワ条約機構軍に対応するのに、通常戦力の増強が必要となる。反対していたフランスが脱退して成立。アメリカは他の加盟国を安心させるため戦術核兵器を67年までに6,000発に増やした。(旧式)

67年12月NATOの役割見直し。抑止とデタント。通常戦力の縮小を模索。

70年代ユーロミサイル危機。ソ連のSS-20新型中距離ミサイル配備で均衡が破れる。79年12月NATOは新型巡行ミサイルの配備と、ソ連への軍縮提案を決定する(二重決定)。サッチャー反共主義でミサイル刷新を主張、また、軍縮に反対する。

83年10月NATOは二重決定に基づいて地上発射巡航ミサイル464基、パーシングⅡミサイル108基の配備決定。反核抗議集会を無視。83年12月イギリスと西ドイツで実戦使用可能となる。

85年ゴルバチェフがソ連の指導者となる。86年4月チェルノブイリ原発事故発生。86年レイキャビクでゴルバチェフは中距離ミサイル全廃を受け入れると表明。87年12月中距離核戦力全廃(INF)条約調印。潜水艦・水上艦艇発射ミサイルは対象外。

89年までにNATOでは短距離核戦力(射程500キロメートル以下)の近代化問題で対立が生まれる。ソ連の通常戦力に対抗するため。サッチャーの短距離核近代化賛成と西ドイツの反対。89年ブッシュ政権NATOの宥和を優先し、短距離核削減と通常戦力削減(CFE)をセットにする。1989年5月NATO会議はCFEで米国の派遣軍を減らすことに合意。ゴルバチョフも合意して1990年にCFE条約締結。80年代末デタントの時代。

1989年秋、ベルリンの壁が崩れる。90年11月ドイツ統一。統一ドイツのNATO帰属が受け入れられる。

NATO改革:ロンドン宣言:防衛的同盟、紛争の平和な解決、武力の先制不使用などを謳う。ソ連に対する西ドイツの経済支援。9月12日ドイツ統一条約成立。

『ラストエンペラー習近平』(エドワード・ルトワック著、文春新書、2021年7月20日発行)

さすがに戦略家というだけあって着眼点・分析力がなかなかスゴイ。

中国では、共産党が国家を領導するので、共産党中央委員会総書記が国家主席より上位である。総書記は7人の中央政治局常務委員から選ばれるが、国民による投票は行われないので国民の信任が得られているわけではない。

習近平

習は2012年総書記になり「八項規定」という贅沢禁止令を掲げた。5年間で153万7千人の汚職幹部を追放した。2018年3月2期10年までとしてきた国家主席の任期を撤廃した。

2017年新時代の中国の特色ある社会主義思想=習近平思想を打ち出す。皇帝になろうとしている。

中国の対外政策は不安定。1.0で平和的台頭、2.0で対外強硬路線、3.0で選択的攻撃、4.0は戦狼外交。その理由は意思決定者が限られるからである。判断ミスを実行してしまう可能性もある。

チャイナ2.0で周辺国に反中国ネットワークができた。大国が強硬姿勢を示すと小国・周辺国は同盟して多国間交渉に持ち込もうとする。「大国は小国に勝てない」というパラドックスがある。2国間で戦うわけではないからだ。例えば、ヨーロッパを席巻したナポレオンに対するイギリスの同盟戦略を見よ。

2020年チャイナ4.0で同時多発衝突。2月にスウェーデンと、6月インドと、ベトナム、オーストラリアには地政学的恫喝を行った。香港国家安全維持法では香港域外にも適用する。海警法は国際社会のルール無視。この結果、世界的な反中国ネットワークができた。ヨーロッパも参戦へ。クアッド4の演習にフランス海軍も参加。イギリスはクイーン・エリザベス空母を極東に派遣した。

シーパワーは海軍力=艦船の数など国の内部で完結する。マリタイムパワーは海洋力で上位概念であり他の国との関係性で決まる。

米中の戦いは軍事ではなくて、経済とテクノロジーの領域にある。中国は革新的な技術を生み出せないが、それはチームワークができないからである。また、経営者の自由と安全がない。新型コロナウィルスを広めてしまったのは中国の政治的判断による。中国は中国国家情報法で国家的スパイ活動を行っている。

台湾有事に日本はどうするか? 冷戦時、フィンランドの隠れた同盟国スウェーデンの行ったことを学ぶといい。しかし、台湾には自分たちで自分を守ろうとする気概がないようなのは残念だ。

習近平は破壊的な人格で、世界にとって有害である。つまづかせて政権から引き下ろす必要がある。

軍事テクノロジーの逆説

歴史の流れを変えた兵器はなかなか採用されなかった。例:機関銃。1904年日露戦争で登場したマキシム機関銃。しかし、第一次大戦までなかなか採用されなかった。第一次大戦で登場した戦車は陸軍ではなく海軍である。タンクという名の由来。M16ライフルは開発当初は米陸軍に拒否され、空軍の警備隊が1961年採用した。陸軍の採用は1963年。2020年9月ナゴルノ・カラバス紛争ではアゼルバイジャンイスラエル製ドローンでアルメニアの戦車を攻撃した。現在のアメリカはまだ大量の航空機を製造している。現代では水上艦は潜水艦のミサイルに対抗できず、無用の長物になりつつある。ドローンとAIが現在の新しい軍事技術だ。

F35はステルス性に特徴があるが、現在、航空機の選択肢としてF35しかないのは危機的だ。F35は限界を過ぎてもう衰退する技術なのだ。航空機の世界で本物のイノベーションは全周囲視界のヘルメット搭載型ディスプレーである。これを使わないと空中戦に勝てない。

戦略のパラドックス

ビジネスの世界ではルールがあるが、戦略の世界ではルールがない。戦略は究極的には国家の生存と係るのでどんな手段でもありうる。アングロサクソンはこれがうまい。ルールによるビジネス⇒うまくいかないと、ルール無視の暴力⇒諭しながら攻撃する。

基本原則は、①組織は独立した状態を維持したいと考える、②他のあらゆる組織も同じように考える。①と②が組み合わさって戦略のロジックが恐ろしく複雑になる。

「道に落ちていた木を拾おうとしたら、それは蛇だった。」という寓話は深い。拾おうとするものが木なら意思をもたないので問題ないが、蛇だと意思があるので危険である。真珠湾攻撃ではアメリカを木だと認識して作戦を立てた。たしかに、その時は木であったが、アメリカはすぐに蛇になって攻撃してきた。サプライズで蛇が寝ているところを抑えてしまう、という作戦は成り立つ。

直線の最短ルートには敵が待っている。戦略の世界に直線はない。勝利が敗北の原因になる。

戦争は平和への最短プロセスである。また平和が戦争の原因になる。

『アフガン侵攻 1979-89 ソ連の軍事介入と撤退』(ロドリク・ブレースウェート著、白水社、2013年2月10日発行)

ソ連第40軍と航空部隊は1979年12月25日アフガニスタンに侵攻を開始し、1989年2月までに主力軍は撤退を完了した。

1973年7月ダウドは共産主義将校の支援を得て、無血クーデターによって国王を退位させる。ソ連はダウドを支援し友好関係を結ぶ。しかし、徐々に西側に傾斜する。

1978年アフガニスタン人民民主党PDPAによる共産主義クーデターが起きる。PDPAはパルチャム派とハルㇰ派の争いで分裂状態だったが、ソ連からの圧力で統合しクーデターを起こし、ダウドを殺害する。ハルク派はタラキとアミンが指導者であった。

1979年3月ヘラートで反乱があり、アフガニスタン政府はソ連に軍事介入を依頼する。ソ連は武力介入は行わずに、顧問、軍需物資、その他でアフガニスタン政府を支援すると決定する。タラキはソ連に何度も支援を依頼し、1979年夏までには事態が動き始める。アミンとタラキの対立があり、アミンが徐々に権力を掌握する。ソ連指導部はタラキを守ると約束する。結局、アミンはタラキを殺害する。

アミンはアメリカに傾斜しているとの報告もあり、1979年12月12日ソ連政治局はタラキ殺害でアミン排除を決める。12月26日カブールのタージ・ベック宮殿にいたアミンを急襲して排除する。アンドロポフはパブラフ・カルマルを革命委員会議長にする。

その後、ソ連軍はアフガニスタン政府軍を支援して反政府軍ムジャヒディンと戦う。ムジャヒディンは一つのグループではなく、様々な敵がいた。複雑な関係だったのはパンジシール渓谷を防衛したアマフド・シャー・マスードである。ムジャヒディンはパキスタンアメリカの支援を受けていた。

侵攻してから割と早い時期から撤退を考え始めたが、歴代の指導部は事態を収拾できなかった。ゴルバチョフが1985年に政権の座に就くと撤退に向けて動き出した。

この間、アフガンで勤務した若者の数は大よそ62万人。公式な死者数は1万5051人、負傷者は5万人以上、1万人以上が障がい者となった。ベトナムでのアメリカ軍の戦死者は5万8260人、行方不明者多数なので、ベトナム戦争より規模は小さい。

 

『刑事弁護人』(亀石 倫子、講談社現代新書、2019年6月20日発行)

警察が捜査対象者やその関係者の車両にGPS端末をくっつけて行動を追跡していた。

このような捜査手法が合法かどうかについて争い、最高裁判所の大法廷において、違法であるという判決を勝ち取った弁護団の記録である。

なかなか迫真的なドキュメンタリーになっていて一気に読んでしまった。最高裁の判断は、

憲法35条では、住居侵入・捜索・押収に対する保障として、住居・書類及び所持品があるが、これに準ずる私的領域に『侵入』されることのない権利が含まれるという解釈で、GPSのような継続的・網羅的に把握することを伴うので個人のプライバシーを侵害する。そのような機器を秘かに装着するのは公権力による私的領域への侵入を伴う。従って、令状がなければ行うことができない。

というものだ。

『イギリス1960年代 ビートルズからサッチャーへ』(小関 隆著、中公新書、2021年5月25日発行)

1960年代が1980年代のサッチャーが登場する機会を作りだしたというのが本書の仮説であり、本書はそのようなストーリーに沿って書かれている。

1960年代の「文化革命」とりわけスウィンギング・ロンドンの描写が楽しい。戦後しばらくして豊かな社会となり労働者階級の若者が消費の主人公となった。

第2章ビートルズの革命は簡潔なビートルズ史だが、苦労して書いているのが分かる。

豊かな社会とニューレフト、労働党の修正主義、許容する社会などの章も読んでいて楽しいが、一番は「モラリズムの逆襲」に登場するメアリ・ホワイトハウスである。残念ながら日本にはこういうおばさんはいないのではないか。

本書によれば、許容する社会がサッチャー登場の種となったのだが、サッチャーはモラルの回復よりも経済を優先した。そして。サッチャリズムはイギリス経済を復活させようとして、規制緩和、民営化などを推し進めた。しかし、その結果、不平等の拡大、富裕層と貧困層の分断を招いたとする。

なかなか意欲的な本だと思う。

『敗者のゲーム 原著第8版』(チャールズ・エリス著、日経BP、2022年1月8日発行)

S&P500の平均リターンを分析した調査を見ると、1980~2016年20年間のトータルリターンのすべては35日間(5000日間の取引日の1%に満たない)に達成されている。

投資哲学・投資コンセプト。アクティブ運用の4つの形態は次のとおり。

・長期的に見て失敗する原因は下げ相場で株から手を引いて、次の上げ相場についていけない⇒稲妻が輝く瞬間に居合わせる

・将来性のある銘柄を誰よりも先に見つけることでリターンを上げる。これは現在ではできなくなっている

・投資戦略。業界調査、経済、金利、新興成長株、バリュー株などの戦略。できるのか?

・超過収益を生み出す力を見出す。見込みのない低位株を避けて、下値で有望銘柄を拾う。

インデックスファンドは投資のプロの考えの総和である。

本書は決めつけ的論理展開が多い。本当に、データに基づいているのか?

1987年10月ブラックマンデー

2008年10月から11月リーマンショック

2020年3月新型コロナウィルスショック

アクティブ投資のリスク

価格リスク:高い価格で買ってしまうこと

金利リスト:金利が上がれば株価は下がる

事業リスク:業績不振で利益が減る

倒産リスク

◎資金が必要な時にないことが本質的な意味である。

リスクに対する別の見方は次の3つ。

・市場リスク

・個別銘柄リスク

・株式グループリスク

株式を売らなければ株価の上下はそれほど気にすることはない。リスク許容度とは市場の極端な暴落機にどこまで耐えられるか。

市場が悲惨な状況になると、自分で決めたことを変更してしまう。

投資をするとき、株がバーゲンになったら買わない人が多い。株式相場の下落は安値で買うための第一歩である。

運用成果測定

・サンプル抽出の偏り

・市場環境が良かったか、悪かったか

・運用機関の技術

過去のパフォーマンスは将来の予想に役立たない

個人投資家が市場を見ながら売買するときは大抵失敗する。マーケットの中心からはずれているため楽観しすぎたり悲観しすぎたりして、上昇相場にも下落相場にも乗り遅れる。

現在、NYSEの売買高の90%以上は機関投資家による。

本当に有利なのは奇妙なことに株価が値下がりし、低迷を続けることである。値下がりした市場にこそ価値がある

自ら投資判断する個人の運用は長期的にはうまくいかないという実証研究は山ほどある。

・自分の投資目的を明確化し、それを継続する。

・取れるリスク許容度を決める。のめり込まない。

・投資成績をしっかり見てそこから学び取ろう。

・毎日株が下がっていくという過酷な状況でどう判断したか。

アクティブ投資の選択法は長く付き合えるファンドであること

ほとんどの投資家は最悪の成績のとき売り、最高の成績の時に買う。(これはだめ)。

ファンドはいくつか選ぶ。分散する。

成功の秘訣はインデックスファンドである。

世代を超えた運用プランをつくるべきだ。

リスクは、インフレリスㇰと市場リスクである。財務省証券は市場リスクはないが、インフレに勝てない。

(感想)

本書はあまり良い本ではないと思う。なにしろ、論拠なしに断定している箇所が多すぎ。(いや、ほとんど論拠なし)。なぜこのような本が8版も版を重ねたのか理解に苦しむ。