『不動産の未来 マイホーム大転換時代に備えよ』(牧野 知弘著、朝日新聞出版、2022年3月30日発行)

不動産のバランスシート

資産側:住宅

負債側:ローン+自己資本

住宅の価値が落ちても債務超過にならないために自己資本が40~50%位欲しい。住宅ローンではこの原則が無視されている。

「そのとき、その場で、必要なスペースを利用する」という考え方の普及。不動産DX化。

不動産の価格は、主要拠点1月1日現在の公示価格(国交省)、都道府県基準地価全国2万か所、路線価評価は国税庁、固定資産税評価額は市町村発表の4種類ある。不動産をビッグデータ化する必要がある。

テレワーク普及で、都心五区の空室率:20年2月1.49%⇒21年10月6.47%にアップ。JR運行本数減。

会社に通勤することを前提とするマイホームの選択で良いか? 通勤という大前提を覆す。

多拠点生活=渡り鳥クラブ

衛星都市は母都市に通勤するための都市ではなくなり、そこで働く場所を用意することになる。

野村総研によると世帯の2019年純金融資産保有額は1554兆円。超富裕層5億円以上8.7万世帯、富裕層1~5億円124万世帯、準富裕層5000万~1億円。資産は高齢富裕層に遍在する。

空き家問題。日本では新築住宅が大量に供給され続けている。2020年度新築住宅着工件数は81万2千戸。前年比8.1%減少。持ち家26.3万、貸家30.3万、分譲23.9万(うち、10.8万がマンション)。持ち家は大都市近郊農家の相続税対策。空き家848万戸のうち賃貸用の空き家が432万戸。節税目的で実需に目を向けていない空きアパート問題が大きい。分譲マンションの空き住戸問題:分譲マンションストックは660万戸。

コンクリートの耐久性は50~60年。マンションを相続したがらない人が増えている。マンションの空き室ができて管理費がたまらなくなる。空き住戸が3割を超すとスラム化する。築年40年を超えると設備や配管に問題が出やすくなる。

中小ビルは採算があうポイントまで土地代を下げていかないとデベロッパーでも建て替えできない。

2022年から団塊世代後期高齢者(75歳)になる。その後に大量の相続が発生する。不動産マーケットに売り圧力がかかる。

生産緑地は1992年制度化された。登録すると30年間営農が必要だが、2022年に8割が30年の期限を迎える。但し10年延長制度ができたので、多くは延長となる。しかし、相続が来るとどうなるか?

20階建て以上がタワマン。首都圏に925棟あり、2021年以降の計画が173棟ある。タワマンは投資家と富裕層の購入が多い。相続対策である。しかしリスクが大きい。タワマンはニュータウンの高層版だが、大勢の人が共有しているので意見の集約ができない。ニュータウンは歴史のない山間部をブルドーザーで切り崩したものだから。

不動産も中国、アジアに近い、西が有望だ。アジア人富裕層の遊び場として良い。別府リゾート。日本の不動産が円安で買われる。日本の不動産所有権は私権が強い。不動産は国家の重要なインフラである。

災害対策を行うにも所有者不明土地があったらできない。現在は相続の際に登記を行うのは義務ではない。山林などは登記を行わないケースが多い。2019年10月台風19号による武蔵小杉のタワマン浸水停電事故。

不動産の価格は土地に収斂する。土地の価格は自然災害との戦いから決まってきた。地盤、津波、氾濫する河川がない。集大成はブランド住宅地ですべて高台にある。権力をもち裕福な人は高台に住み、商人は災害と向き合いながら下町に住んで日々の金を稼ぐ。

買ったマンションは値上がりして欲しい。投資家のみならず、一般人もそう願うようになった。東京五輪選手村の晴海フラッグ。第3期分譲は631戸に対して、5546組の応募あり、約8.7倍の倍率。19年募集でも24年3月引き渡しなので、築5年の中古物件になる。坪単価270万から300万円台半ばで圧倒的に安い。しかし、駅まで遠い。管理費などを考えると普通の家庭では買えない。投資家? 不動産業者の買い占め? そもそも都区内の新築マンションの平均価格は20年で7712万円。現在の日本のマンションマーケットには投資家が多い。

区分所有オフィスへの投資。出口が難しい。流動性を確保できないなら投資にならない。また、大規模修繕、市況変化への対応力が違うと区分所有者間で意見が合わない。

投資マネーは実需ではない。

※不動産、マンションが投資の対象になって値段が吊り上げられると困るのは、住み家を探している若い人たちだけど、どうしたら良いか?