世界史

『フランス史10講』(柴田 三千雄著、岩波新書、2006年5月19日発行)

『ドイツ史10講』、『イギリス史10講』と並ぶ10講シリーズの一つ。フランスという国はなかなか階級間闘争の激しい国だ。三冊のシリーズを通読すると、それぞれのお国柄が比較できて楽しい。近代の政変についてみると、イギリスが、うまく民主主義まで立ち至…

『イギリス史10講』(近藤 和彦著、岩波新書、2013年12月発行)

後書きを見て仰天、最初の企画会議が1997年7月とのこと。出版まで16年かかっているのだ。ローマ以前の時代から現代に近いところまでを簡潔にまとめた力の入った本という印象である。『ドイツ史10講』とともに読む価値のある本といえる。特に、ビクトリア女王…

『ドイツ史10講』(坂井 滎八郎著、岩波新書、2003年2月発行)

簡潔で、大変分かりやすいドイツ史である。ゲルマン時代〜ワイマ−ル共和政を経て、ヒトラーのナチ時代、さらに統一ドイツまで。特にビスマルク時代、ビスマルクが退陣してからドイツ包囲網が結成さて、第一次大戦にいたるまで。第一次大戦の終結から、ワイマ…

『ハプスブルグ帝国、最後の皇太子』(エーリッヒ・ファイグル著・北村 佳子訳、朝日新聞出版、2016年4月)

オーストリアは、第一次大戦を引き起こしたフランツ・ヨーゼフ皇帝の名前位しか知らなかった。フェルディナント大公が暗殺された後、甥のカール一世が即位していたのだ。本書はそのカール一世の息子達の物語である。カール一世は、1918年11月12日ハプスブル…

『物語 ストラスブールの歴史』(内田 日出海著、中公新書、2009年10月25日発行)

ストラスブールは、フランスとドイツの国境地帯 アルザスの都市である。ライン川の支流のイル川の三角州の中に作られた。ローマ時代よりも前、ケルト人がその元を作ったのだが、川と川に囲まれた領域は、見知らぬものからの攻撃を避けるのに都合が良いという…

『第二次世界大戦の起源』(A. J. P. テイラー、吉田輝夫訳、中央公論社、1977年3月25日発行)

第一次世界大戦の後から、第二次世界大戦が始まるまでの期間のヨーロッパの体制について。特にドイツ、イギリス、フランス、イタリアを中心とする。ベルサイユ体制、エチオピア戦争とロカルノ条約、オーストリア併合、チェコスロバキアの危機を経て、ポーラ…

『第二次世界大戦 1939-1945 中』(アントニー・ビーヴァー著、白水社、2015年7月)

だいぶ前に、上巻と下巻を読んだ。中巻があることに気が付かなかった。それくらい、同じような戦闘の記録の繰り返しの本。戦闘に次ぐ戦闘、殺人に次ぐ殺人、最後はガスによる大量殺人。こんなことが行われていたなんて、とても信じがたい話だ。今後起きなけ…

『ヒトラー・1932〜34 ドイツ現代史への証言』(上・下)(四宮 恭二著、NHKブックス、昭和56年2月、3月)

ワイマール共和国の最後の時代、ヒトラーが台頭したときにドイツに1年半ほど留学した著者が見聞きした様子を中心にまとめた本。ワイマール共和国の最後の大統領であるヒンデンブルクが最初は、伍長と馬鹿にしたヒトラーが最後はヒンデンブルクの後継者として…

『夢遊病者たち』(クリストファー・クラーク、小原淳訳、みすず書房、2017年1月)

第一次大戦がどのように起きたかを、起きる前のバルカン半島の状況から物語風に描く。第1巻 第1章はセルビアである。まず、1903年6月11日午前2時過ぎに起きたセルビアでの王と王妃の虐殺から始まる。1912年10月〜13年5月の第一次バルカン戦争、1913年6〜7月…

『ロシア革命』(池田嘉郎、岩波新書、2017年1月発行)

2017年2月のロシア二月革命から10月のロシア十月革命までの期間についての書である。最後はボルシェビイキによる革命までの8ヶ月間を書こうという着眼点は面白いかもしれない。しかし、文章がまったく面白くない。面白くないのは、なぜなんだろう? と思うの…

『ロレンスがいたアラビア 下』(スコット・アンダーソン著、山村宜子訳、白水社、2016年)

下巻はアカバの攻略で有名になったロレンスの活躍、そしてダマスカス奪取でアラブ反乱終盤戦に至る。ダマスカス以後から終末まで、という話。フランスと英国が中東を取り合う話は、他の本「アラブ500年史」とか、「平和を消滅させた和平」などで読んだ話だが…

『ロレンスがいたアラビア 上』(スコット・アンダーソン著、山村宜子訳、白水社、2016年)

英国のロレンスを主軸に、米国人イェール、米国系ユダヤ人アーロンソン、ドイツのスパイ ブリューガーという4名の欧米人に役回りさせながら、第一次大戦のアラブの反乱の経過を語る。純粋な歴史書ではなく、かといって伝記でもない。半分フィクションのよう…

『1945年以後 上・下』(タッド・シュルツ、文藝春秋、1991年5月)

上巻を古本屋で見つけて100円で買い、読んでみて面白かった。下巻を読みたいと思ってアマゾンで買った。アマゾンでは無料・郵送料負担のみである。アマゾンで買った古本は、もしかすると20数年前に印刷されたまま一度も読まれなかったものかもしれない。第二…

『ヒトラーとナチ・ドイツ』(石田 勇治、講談社現代新書、2015年6月20日)

ヒトラーの登場からホロコーストまで。ざっと紹介した本だが、ちょっと魅力に欠けるような気がする。なぜだかわからない。第一次大戦の敗戦とヴェルサイユ条約の屈辱、ヴァイマル共和国の混乱の中でナチ運動が勢力を伸ばした背景は良く分かる。ヒンデンブル…

『コールダー・ウォー』(マリン・カッサ、草思社、2015)

『コールダー・ウオー』(マリン・カツサ、草思社、2015/5)を読み終えました。プーチンのエネルギー資源戦略を核とする戦略解説。プーチンはロシアの圧倒的な石油・ウラン・天然ガス資源だけでなく、地球規模で資源企業を支配しようとしている。これは米国の…

『クリミア戦争』

国際ブックフェアで、2割引きでゲット。税別3600円×上下2冊の2割引きは大きい。いつも2割引きになったら良いなあ。クリミア戦争はどうやら宗教戦争らしい…

『キューバ危機』(マントン、ウェルチ著、中央公論新社、2015年4月発行)

米国の一番偉大な大統領がケネディかどうかは知らないが、私にとってはケネディの時代が一番面白い。個人的には、子供のころ暗殺されたニュースに大きなショックを受けた記憶がまだ強く残っている。また、ケネディの演説を収めたソノラマシートで英語を学ぼ…

『パレスチナの歴史』(奈良本英佑著、明石書房、2005年)

三省堂神田店2Fのアウトレット本コーナー、先日行ったところかなり空いている場所がありました。本が売れても補充が間に合っていない様子です。少し前に『パレスチナの歴史』(奈良本英佑著、明石書房、2005年)をここで買いました。定価2800円のところ、110…

『ワイマル共和国』(林 健太郎、中公新書、1963)

以前に古本屋で見つけて、購入・積読状態のものを読み始めた。第一次大戦の敗戦時にドイツで誕生して、ヒットラー政権までの間の共和国らしい。当時、ドイツは、戦勝国に占領されなかったので、皇帝がいなくなった後、大混乱になったことが分かる。もし、日…

『マホメット―ユダヤ人との抗争―』(藤本 勝次著、中公新書、1971年)

イスラム教の誕生からマホメットが、イスラム教国の基礎を築くまでの話。ユダヤ教を信じる部族を滅ぼすところ。今の宗教とは違って、昔の宗教は政治・経済そのものであったようだ。もしかすると、イスラム教国はまだ政教一致の段階なのかもしれないな。

『アラブ500年史』(上・下)(ユージン・ローガン著、白州英子訳、白水社、2013年11月発行)

上巻437ページ、下巻375ページの大著である。上巻はオスマントルコがマムルーク朝を倒す1516年〜1948年にイスラエルが第一次中東戦争を制するまで。下巻は、本編が2009年のオバマ大統領のカイロにおける演説まで。付録として2011年のアラブの春のことが書か…

『聖書と文明の歴史』(エルンスト・フォン・ドプシュッツ著、小林 泰雄訳、エルピス発行)

中世の聖書は、歴史〜経済まで影響。ユダヤ人のみが金融業を営むことができた(p.90)。「モーゼの律法は、ユダヤ人は、外国人には利子を取って金を貸して構わない。」「キリスト協会は、クリスチャンは、相手が誰であろうと、利子を取って金を貸してはならな…

『物語 近現代ギリシャの歴史』(村田 奈々子著、中央公論新社刊、2012年)

ギリシャといったら悠久の歴史をもつ国、という固定観念をもっていたのだが、この本を読んでそれはまったく違うということがわかった。まず、そもそもいまのギリシャのあたりにギリシャ王国ができたのが、1830年なのだ。中世においては、現在のギリシャの地…

『イスラエルとパレスチィナ』(立山 良司著、中公新書、1991年2月5版)メモ

シオニズム運動 テオドール・ヘルツル著『ユダヤ人国家』(1896年)に始まる。19世紀末以降、ユダヤ人がパレスティナに移民を開始。1920年4月サン・レモ会議でパレスティナが英国委任統治領となる。トランス・ヨルダンがパレスティナの東半分(ヨルダン川以…

『ハプスブルクとオスマン帝国』(河野 淳著、講談社メチエ) 近代政治の誕生

近代政治とはなにか?著者の見方が興味深い。近代に行なわれた政治 vs 近代的な特長をもつ政治国家身体論:中世ヨーロッパでは、「人体」のアナロジーとしての国家(王国)があった。(p.176)人体としての国家の頭と手足。体全体に対する四肢の貢献。頭によ…

『イスラームから見た世界史』(タミル・アンサーリー著)

オスマン帝国の誕生13世紀末〜メフメト二世(1433〜)がコンスタンティノープルを奪取する。イスタンブルに改名。ウルバン(ハンガリー人の技師)の射石砲は象徴的意味。オスマン朝は、ヨーロッパとアジアにまたがる帝国となる。現在のアメリカに似た多様な…

『国際秩序 18世紀ヨーロッパから21世紀アジアへ』(細谷 雄一、中公新書)

国際秩序の思想には、均衡、協調、コミュニティの3つの原理がある。 (1)均衡はパワーを基本とし、パワーとパワーを均衡(バランス)させることを秩序の原理とする。しかし、力と力の均衡をとるのは脆弱で危険であり、戦争の原因になったとも考えられる。 (2…

「ルーズベルト秘録 上・下巻」(産経新聞「ルーズベルト秘録」取材班)を読む

様々な書籍、資料からルーズベルト大統領の時代と、ルーズベルト自身についての解釈を試みる書。ニューディールから第二次大戦への参戦、特に、日米開戦、日本の敗戦が決定した後のヤルタ会談での戦後世界を決めるまでについての経過がよく分かる。日本が中…

『毛沢東の朝鮮戦争』(朱建栄著、岩波書店、1991年)戦後の世界の枠組みを変え、いまだに朝鮮半島分断のひずみを残す。朝鮮戦争のドラマを中国側から見た本

『毛沢東の朝鮮戦争』(朱建栄著、岩波書店、1991年)を読んだ。国民党との内戦に勝利した直後の新中国が、朝鮮戦争に参戦するまでの、毛沢東を中心とする指導部の意思決定の過程を分析したすばらしいレポートである。朝鮮戦争の経過を簡単に復習すると:金…

「朝鮮戦争 金日成とマッカーサーの陰謀」(萩原 遼著、文春文庫、1997年)

朝鮮戦争がなぜ始まったのかは、ある程度想像できるし、米軍側を取材した本として「ザ・コールデスト・ウインター朝鮮戦争」を読んだこともある。しかし、本書は北朝鮮側の資料を調査したものである、という触れ込みで関心をもって読んでみた。金日成はソ連…