『自滅する中国 なぜ世界帝国になれないのか』(エドワード・ルトワック著、芙蓉書房出版、2013年7月29日発行)

中国の経済的発展に伴い、軍事予算も相応に増えて、軍事的な大国になり周辺国が脅威を感じるようになる。そして、周辺国が、その脅威を減らす方向で互いに同盟を結ぶようになっている、という主張を行っている。 キーワードは大国の自閉症。巨大国家のリーダ…

『地球の中身 何があるのか、何が起きているのか』(廣瀬 敬著、講談社ブルーバックス、2022年1月20日発行)

地震波には横波と縦波があり、初期微動は縦波、主要動は横波。横波は液体中を伝わらない。マントルは横波を伝える。マグマは深いところから上がってくる。 地球の半径は6370km、地殻(厚さ6~30km)、地殻の下がマントル(地表から2890kmまで)、コア(外核…

『ヨーロッパ冷戦史』(山本健著、ちくま新書、2021年2月10日発行)

北大西洋条約。1949年4月、アメリカ、カナダ、イギリス、フランス、ベルギー、オランダ、ルクセンブルグ、イタリア、デンマーク、ノルウェー、ポルトガル、アイスランドの12か国で調印。北欧から地中海まで相互防衛の軍事同盟。北大西洋条約機構(NATO)とな…

『ラストエンペラー習近平』(エドワード・ルトワック著、文春新書、2021年7月20日発行)

さすがに戦略家というだけあって着眼点・分析力がなかなかスゴイ。 中国では、共産党が国家を領導するので、共産党中央委員会総書記が国家主席より上位である。総書記は7人の中央政治局常務委員から選ばれるが、国民による投票は行われないので国民の信任が…

『アフガン侵攻 1979-89 ソ連の軍事介入と撤退』(ロドリク・ブレースウェート著、白水社、2013年2月10日発行)

ソ連第40軍と航空部隊は1979年12月25日アフガニスタンに侵攻を開始し、1989年2月までに主力軍は撤退を完了した。 1973年7月ダウドは共産主義将校の支援を得て、無血クーデターによって国王を退位させる。ソ連はダウドを支援し友好関係を結ぶ。しかし、徐々に…

『刑事弁護人』(亀石 倫子、講談社現代新書、2019年6月20日発行)

警察が捜査対象者やその関係者の車両にGPS端末をくっつけて行動を追跡していた。 このような捜査手法が合法かどうかについて争い、最高裁判所の大法廷において、違法であるという判決を勝ち取った弁護団の記録である。 なかなか迫真的なドキュメンタリーにな…

『イギリス1960年代 ビートルズからサッチャーへ』(小関 隆著、中公新書、2021年5月25日発行)

1960年代が1980年代のサッチャーが登場する機会を作りだしたというのが本書の仮説であり、本書はそのようなストーリーに沿って書かれている。 1960年代の「文化革命」とりわけスウィンギング・ロンドンの描写が楽しい。戦後しばらくして豊かな社会となり労働…

『敗者のゲーム 原著第8版』(チャールズ・エリス著、日経BP、2022年1月8日発行)

S&P500の平均リターンを分析した調査を見ると、1980~2016年20年間のトータルリターンのすべては35日間(5000日間の取引日の1%に満たない)に達成されている。 投資哲学・投資コンセプト。アクティブ運用の4つの形態は次のとおり。 ・長期的に見て失敗する…

『株式市場の本当の話』(前田 昌孝著、日経プレミアシリーズ、2021年3月8日発行)

経済の実態成長率と関係なく株が上がった。MCSI全世界株指数と日経平均の動きは一致している。配当も含めた日経平均(トータル・リターン・インデックス)は2020年11月25日に1989年末の最高値を超えた。2020年は外国人、投資信託、個人とも売りが買いより多…

『物価とはなにか』(渡辺 努著、講談社選書メチエ、2022年1月11日発行)

1974年は消費者物価指数CPIが前年比23%増加し、「狂乱物価」と名付けられた。このときはガソリンなど石油関連製品の値段が上がり、CPIも上がった。インフレの原因は原油高と信じられているが、その後の分析では原油高とCPIに因果関係がないことが示されてい…

『伝説のファンドマネージャーが見た 日本株式100年史』(山下 裕士著、クロスメディア・パブリッシング発行、2020年6月1日)

データを集め、数字を分析し、感性(直観)で判断する。 値下がりしたとき、買い増すか、損切するか。 戦前は、日清・日露・第一次大戦の戦争景気で上げ、戦争終結でピークを付けた。太平洋戦争は管理相場。 スーパーサイクル 1950年7月6日の85円から1989年1…

『北極がなくなる日』(ピーター・ワダムズ著、原書房、2017年11月27日発行)

「北極がなくなる」というタイトルは正しくなく、北極の氷がなくなる日が正しいだろう。 1950年代と1960年代に南極とグリーンランドの氷床コアの採掘がはじまって、解析技術が進歩した。ここ40万年ほど気温と二酸化炭素・メタンガスの濃度を推定すると、氷期…

カレー評価メモリアル(レトルトによる)

評価基準を揃えるためレトルトカレーで評価する。随時追加。 1.ボンディ(神田) チーズカレー 最高 2.黒毛和牛と10種スパイスのごろごろビーフカレー(中辛)成城石井 肉がゴロゴロ入っているのが良い。高いが価格だけのことはある。 3.成城石井・中…

『株式投資2022 賢い資産作りに挑む新常識』(前田 昌孝著、日経プレミアシリーズ、2021年11月18日)

日本株式の目を覆う惨状 2021年10月26日現在の日経500種平均銘柄の中で、1989年にも上場していた銘柄は323銘柄あり、直近株価が1989年を上回っているのは150銘柄(46%)のみ。95銘柄は半値以下、14銘柄は10分の1以下。 1989年末に上場していた1334銘柄につ…

『大陸と海洋の起源』(アルフレッド・ウェゲナー著、講談社ブルーバックス、2020年4月20日発行)

ウェゲナーの大陸移動説最終版(1929年)の翻訳である。ウェゲナーは大陸移動説を1910年頃に着想、1912年1月6日の地質学会の席で初めて発表した。1915年本書初版を発行、1929年に第4版を発行した。 当時は地球収縮説、海洋底永久不変説(米国の地質学者間で…

『マルチメッセンジャー天文学が捉えた新しい宇宙の姿』(田中 雅臣著、講談社ブルーバックス、2021年12月20日発行)

宇宙からくるシグナルの観測は、光(19世紀)、赤外線、電波、X線(20世紀)、ニュートリノ、重力波(21世紀)に広がる。 長さスケール 距離の測定:地球公転の年周視差は1万光年まで⇒明るさの分かっている星(標準光源)の明るさを使う(セファイド型:5000…

『キッシンジャー回想録 中国(下)』(キッシンジャー、岩波書店、2012年3月28日発行)

下巻の中心的登場人物は鄧小平である。その前に、周恩来の失脚・キッシンジャーとの別れ、毛沢東の死についても語られる。1973年11月には周恩来がいつもより毛沢東に敬意を払い、ためらい勝ちであったが、歴史家の指摘ではそのころ周恩来に対する四人組の批…

『キッシンジャー回想録 中国(上)』(キッシンジャー、岩波書店、2012年3月28日発行)

第二次大戦後、米中対立となる。朝鮮戦争(1950年6月25日攻撃開始、1953年7月27日休戦合意)、第一次台湾海峡危機(1954年1月18日大陸側が大陳島と一江山島に侵攻~1955年休戦)、第二次台湾海峡危機(1958年8月23日沖合の島への砲撃)で、米中対立が続く。…

『破綻の戦略 私のアフガニスタン現代史』(髙橋 博史著、白水社、2021年12月発行)

アフガニスタンの紛争について、主に1970年代から2001年頃までの状況である。 最初は、1978年4月のダウード大統領政権に対する軍事クーデター。人民民主党が政権を取る。1979年12月27日ソ連がアフガンに軍事介入。その前からソ連介入を避けようと努力して処…

『現代ロシアの軍事戦略』(小泉 悠著、ちくま新書、2021年5月10日発行)

ロシアは欧米に比べて経済力でも、技術力でも劣勢なので対抗策を考えている。 ロシア連邦軍は2021年定数101万人、実勢90万人。徴兵25万人、職業軍人21万人、契約軍人40万人他。 現在はポスト・ポスト冷戦時代だ。 NATOの拡大 1999年NATO第一次東方拡大でチェ…

『頼朝と義時 武家政権の誕生』(呉座 勇一著、講談社現代新書、2021年11月20日発行)

鎌倉幕府を創立した源頼朝を中心として、源氏、鎌倉幕府の功労者を書き、頼朝の妻正子の一族である北条が鎌倉幕府を支配するに至る経過を書く。両者の概要である。 頼朝が鎌倉幕府成立の功臣を次々に誅殺するのは、まるで漢の高祖そっくり。狡兎死して走狗煮…

『米中戦争 「台湾危機」驚愕のシナリオ』(宮家 邦彦著、朝日新書、2021年10月30日発行)

米中戦争は台湾に関連して起こる可能性が大きいとして、どのようなケースでどのような危機が起きるかを分析している。 抽象的な議論であまり面白くはないが、こういう検討も必要かしれない。 なお、本書を読んで初めて知ったことがいくつかある。 まず、台湾…

『歴史とはなにか 新しい「世界史」を求めて』(鈴木 董、岡本 隆司著、山川出版社、2021年8月20日発行)

明治維新=体制そのものの変革・ご破算、清朝の西洋化改革は体制内改革と。 西欧中心のグローバルという考え方に反対しているようだ。 鈴木さんは、イスラム特にオスマン帝国史が専門のようだ。 岡本さんは、中国近代史が専門ということで、日本史専門の先生…

『地球46億年気候大変動』(横山 祐典著、講談社ブルーバックス、2018年10月20日発行)

二酸化炭素の濃度が地球全体の気温の変動に与える影響について。 地球の大気組成・地上付近:窒素78.1%、酸素20.9%、アルゴン0.93%、二酸化炭素0.035%。二酸化炭素は強い温室効果をもつ。 グリーンランド氷床6m、南極氷床70m海面を上昇させる淡水を蓄えてい…

『最悪の予感 パンディックとの戦い』(マイケル・ルイス著、早川書房、2021年7月15日発行)

アメリカの新型コロナウィルスへの対処についての物語である。いくつかのストーリー、あるいはケーススタディと言っても良いが、を連ねて描いているためどの程度の代表性があるのかが分かりにくいという点が気になる。それを割り引いてもが、アメリカが新型…

『古文書の面白さ』(北小路 健著、新潮選書、1984年11月20日発行)

古文書研究者としての道を志しながら、満州事変・満州国設立から志那事変へと続く戦争のただ中で満州に渡り、終戦時に書物をソ連兵に焼き捨てられるまでの経緯、新京から大連への決死行など日中戦争の前後の時代の話が面白い。今のような落ち着いた時代とは…

『新賢明なる投資家 割安株の見つけ方とバリュー投資を成功させる方法 下』(ベンジャミン・グレアム&ジェイソン・ツバイク著、パンローリング、2005年4月3日発行)

成長株は過去および現在の収益からすると大幅な高値で売られている。これを説明するための数学的な価値判断基準が提供される。しかし、株式の分野はこうした数学はもっとも当てはまらない分野である、という指摘は本書で何回も繰り返されている。 アナリスト…

『信長の夢「安土城」発掘』(NHKスペシャル 安土城プロジェクト著、NHK出版、2001年7月30日発行)

安土城の発掘でわかる、城に現れた信長の思想という触れ込み。ある程度は真実だろうが、ちょっと想像に過ぎるところもある。 とりあえず、斜め読みで足りそうな本といえる。

『文字と組織の世界史 新しい「比較文明史」のスケッチ』(鈴木 董著、山川出版社、2018年8月20日発行)

従来の世界史は、ギリシャ・ローマ世界とその宗教的精神を継承した西欧の歴史の進展を中心として文明の歴史をとらえる傾向があった。 本書はこれに対して新しい世界史を提唱しようとする。その方法としては文字の生まれと変遷をキーとする。 メソポタミア、…

『戦争はいかに終結したか 二度の大戦からベトナム、イラクまで』(千々和 泰明著、中公新書、2021年7月25日発行)

戦争の終結の形態は一方の極に「紛争原因の根本的解決」、他方の極に「妥協的和平」があり、それをめぐって「現在の犠牲」と「未来の危険」のジレンマとどう評価する結果に依存するという。 1.第一次世界大戦 仏・英を中心とする連合国はロシア革命でロシ…