『ベネズエラ ―溶解する民主主義、破綻する経済』(坂口 安紀著、中公選書、2021年1月10日発行)

ベネズエラは、世界最大の石油の確認埋蔵量を誇る。1990年代までは比較的治安が良く、石油大国であった。2大政党制のもとで安定した民主体制が30年以上継続していた。 1998年12月大統領選でウーゴ・チャベスが当選、1999年に大統領となる。新憲法を制定。国…

『政府債務』(森田 長太郎著、東洋経済新報社、2022年12月8日発行)

政府債務について真正面から取り組んで考察した書。 2000年から20年ほどは日本が近未来において破綻することにリアリティを感じた人が少なくなかった。 IMFや世銀の想定する破綻は対外債務返済能力。従来は小規模国家のみであった。2012年ギリシャの実質デフ…

『軍と兵士のローマ帝国』(井上 文則著、岩波新書、2023年3月17日発行)

ローマ帝国は、紀元前27年から476年まで続いたが、その歴史は、大きく前期と後期に分けられる。 ローマは紀元前753年に都市国家として建国。前509年から前27年まで共和制。前272年イタリア半島を統一。カルタゴとのポエニ戦争を経て、地中海全域に支配を広げ…

『国債リスク 金利が上昇するとき』(森田 長太郎著、東洋経済新報社、2014年2月13日発行)

2013年4月4日金融政策決定会合で「異次元の金融緩和」を決定。「2年程度で前年比2%の物価上昇率を達成する」ことを目的とする。 年平均利回り=((満期償還額-現在の時価)/残存年数+利率)÷現在の時価×100 日本経済の問題点は資金の需要がないこと。金…

『日本銀行 我が国に迫る危機』(河村 小百合著、講談社現代新書、2023年3月20日発行)

2022年10月1ドル151円、32年振りの円安。 2013年から10年近く異次元緩和が続き、超低金利状態。2020年春のコロナ対応の財政出動は目立った負担増なし。 2021年から世界の主要国は物価が急上昇。消費者物価上昇は英国・ユーロは前年比10%超え、米国は10%弱…

『記憶力を強くする 最新脳科学が語る記憶のしくみと鍛え方』(池谷 祐二著、ブルーバックス、2001年1月20日発行)

人の脳には約1000億個の神経細胞がある。神経細胞の数は誕生したばかりの時が一番多い。使われていない神経細胞が選ばれて1日数万個減っている。脳は70歳になるまでの5%軽くなる。 但し、海馬だけは使うと増殖する。玩具を入れた環境で育てたネズミは海馬が…

『野生化するイノベーション 日本経済「失われた20年」を超える』(清水 洋著、新潮選書、2019年8月発行)

書名が面白い。 イノベーションの経営学的な研究成果のまとめ。イノベーションとは経済的な価値をもたらす新しいものごと。経済的な成長の源泉。 イノベーションはビジネスチャンスの方に移動する。 イノベーションは飼いならせない。管理できない。 イノベ…

『天変地異の地球学』(藤岡 換太郎著、講談社ブルーバックス、2022年8月20日発行)

天変地異が周期的に一緒にやってくるという主題について、短い周期のものから長い周期のものまでを概観する。 台風、エルニーニョ、ラニャーニャ、竜巻、豪雨、干ばつなど気象災害、火山、地震など固体としての地球によるもの、パンデミックのような生物に起…

『アメリカVSロシア 冷戦時代とその遺産』(ウォルター・ラフィーバー著、芦書房、2012年2月12日発行)

第2次世界大戦期から2006年までの歴代の大統領と政権の外交・戦争に関して行ってきたことを概観している。米国の各大統領政権の行ったことの記述も読みごたえがある。第1次世界大戦期にロシアがソ連になり、そして戦後のソ連との対立=冷戦、1991年まではソ…

『砂戦争 知られざる資源争奪戦』(石 弘之著、角川新書、2020年11月10日発行)

コンクリートに混ぜるための砂が不足している。 世界で毎年470~590億トンの砂が採掘されており、その7割が建設用コンクリートに混ぜる骨材として使われている。砂の市場規模は約700億ドル。 20世紀都市化の進展とともに、構想ビルが増え、セメントの需要が…

『昭和の参謀』(前田 啓介著、講談社現代新書、2022年7月20日発行)

昭和陸軍の参謀で、戦後も生き続けた人たちを取り上げて、各人の戦中から主に戦後の過ごし方をまとめた本である。 掲載されているのは、石原莞爾、服部卓四郎、辻正信、瀬島龍三、池田純久、堀栄三、八原博道。 著者は読売新聞の新聞記者である。戦争に関係…

『分断の克服 1989-1990―統一をめぐる西ドイツ外交の挑戦』(板橋 拓己著、中公選書、2022年9月10日発行)

1989年11月9日のベルリンの壁崩壊から1990年10月3日のドイツ統一の期間における西ドイツの外交について。外務大臣を務めたゲンシャーの役割を中心に分析。サロッテの『1989』と比較しても劣らない良書だと思う。 本書のメインの趣旨とは異なるが、ベルリンの…

『連星から見た宇宙』(鳴沢 真也著、講談社ブルーバックス、2020年12月20日発行)

宇宙の恒星の半分は連星。兵庫県立大学西はりま天文台「なゆた」望遠鏡。 全天で太陽以外に最も明るい星である「シリウス」(おおいぬ座)は、20天文単位離れた星の連星。天文単位とは太陽と地球の距離を1とする。 北極星「ポラリス」(こぐま座)は3重連星…

『コーヒーの科学 「おいしさ」はどこで生まれるのか』(旦部 幸博著、講談社ブルーバックス、2016年2月20日初版一刷発行)

コーヒーを化学的視点で分析した本。単に美味しいコーヒーを飲みたい立場からはまったく面白くないし、あまり参考にならない。

『よくわかる最新パワー半導体の基本と仕組み 第3版』(佐藤 淳一著、秀和システム、2022年6月10日)

パワー半導体とは、AC⇒DC(コンバータ)、DC⇒AC(インバータ)、電圧、周波数など電力の変換を行う。 2020年世界の半導体デバイス市場は50兆円。パワー半導体は2兆8千億円程度(p.22,80)。 パワー半導体は単機能半導体(ディスクリート半導体) FET:電界効…

『アフガニスタン・ペーパーズ 隠蔽された真実、欺かれた勝利』(クレイグ・ウィットロック著、岩波書店、2022年6月24日発行)

2001年9月11日同時多発テロ発生。 2001年9月14日米国議会はアル=カーイダとその支持者に対する軍事力使用を承認。10月7日米軍がアフガニスタンに空爆を開始。 ブッシュ、オバマ、トランプ3代の大統領は戦争を終結できず。この間、米国政府や軍の司令官たちは…

『アフター・アベノミクス 異形の経済政策はいかに変質したのか』(軽部 謙介著、岩波新書、2022年12月20日)

第二次安倍政権は2012年から2020年まで。この間のアベノミクスについて、同じ著者による三部作の最後。アベノミクスは大規模金融緩和により、円安、株価上昇、GDP成長がプラス化などの経済復調をもたらした。しかし物価上昇は2%に届かず。2%の達成目標に…

『脱「中国依存」は可能か』(三浦 有史著、中公選書、2023年1月10日発行)

中国の世界における経済的プレゼンスは米国に比肩する。輸出入貿易額は米国を上回り、中国の低所得向け対外融資は2020年でG7合計の4倍である。中国の自動車販売台数は米国の1.7倍である。 日本の対中貿易は2021年には対米貿易の1.7倍となった。 しかし、中国…

『世界一やさしい 株の信用取引の教科書 1年生』(ジョン・シュウギョウ著、ソーテック社、2015年9月30日発行)

信用取引の方法を分かりやすく解説している。信用取引の始め方の説明としては分かり易くていいが、本書の売り買いのポイントを実際に応用できるかどうか? あまりにも株価の変動パターンを固定化しすぎているのではないか? 本書は基本的にチャートの形で判…

『ウクライナ戦争』(小泉 悠著、ちくま新書、2022年12月10日発行)

ロシアのウクライナ侵攻が始まったのは2022年2月24日午前5時。プーチンは当初首都キーウを短時間で制圧、ゼレンシキ―を追放、傀儡政権を樹立して、ウクライナを傀儡国家をするつもりだったようだ。そういえば、これは、旧ソ連のアフガン侵攻、旧関東軍の満州…

半導体市場=製造装置+素材・材料

製造工程 イラストで分かる半導体製造工程|半導体業界研究サイト「SEMI FREAKS」 マスク製造:回路設計、フォトマスク作成 ウェーハ製造:シリコンインゴット、シリコンインゴット切断、ウェーハ研磨 前工程:ウェーハ表面酸化、薄膜形成、フォトレジスト塗…

『孫子—「兵法の神髄」を読む』(渡邉 義浩著、中公新書、2022年11月25日発行)

孫子と言われる人物は二人いる。 孫武—春秋時代の呉で活躍した。前6世紀頃。 孫臏—戦国時代の斉で活躍した。前4世紀頃。 現在の『孫子』は三国時代の曹操(155-220年)が定めた魏武注版。 全13篇。 国、王、将、兵士、などについて、現在にも通じる合理的な…

『ベリングキャット デジタルハンター、国家の嘘を暴く』(エリオット・ヒギンス著、筑摩書房、2022年3月30日発行)

ベリングキャットとは猫に鈴をつけるの意味。 クレムリンは情報操作の4Dを活用する。否定(Dismiss)、歪曲(Distort)、目眩まし(Distract)、恐怖(Dismay)。 ネット上の主張は仮説でしかない。それぞれの人が補強証拠を見つけて裏付けをとって検証する…

『世界インフレの謎 そして、日本だけが直面する危機とは?』(渡辺 努著、講談社現代新書、2022年10月20日発行)

2008年のリーマンショックを契機として不況が発生し、世界が低インフレとなった。グローバリゼーション、少子高齢化、技術革新の頭打ちが要因として挙げられている。 ウクライナ侵攻前の2021年から高インフレが始まっている。戦争が主な原因ではない。2022年…

『徳川家康の決断 桶狭間から関ケ原、大坂の陣まで10の選択』(本多 隆成著、中公新書、2022年10月25日発行)

日本史研究はもう進展の余地が少ないのかと考えていたが、本書を読むとそうでもないようだ。例えば桶狭間の合戦。信長は2000人の動員で、今川の2万5千人とも言われる大軍との戦い。従来は迂回奇襲説が信じられてきたが、しかし正面攻撃説が受け入れられるよ…

『デマの影響力』(シナン・アラル著、ダイヤモンド社、2022年6月7日発行)

ハイプとは感情を刺激する広告。フェイスブックで感情を刺激するメッセージは投稿を促す。感情を広める。(p.292) Twitterで2014年2月~3月にかけての2か月間、部分的に真実・部分的に嘘のニュースの拡散が急増した。クリミアの併合が起きたタイミングであ…

『欧州分裂クライシス ポピュリズム革命はどこに向かうか』(熊谷 徹著、NHK出版新書、2020年3月20日発行)

2020年1月31日英国が欧州連合(EU)を離脱。離脱推進派は、ブレグジット党のナイジェル・ファラージ、ボリス・ジョンソン首相。2016年の国民投票による。 ファラージは、2006年から2009年、2010年から2016年まで英国独立党(UKIP)の党首を務めた。欧州統合…

『韓国併合 大韓帝国の成立から崩壊まで』(森 万佑子著、中公新書、2022年8月25日発行)

朝鮮王朝 1392年李成桂が建国、1897年に大韓帝国になる。明が政治制度のモデル。 最後の第26代高宗は11歳で即位。大院君(高宗の父)が取り仕切る。1868年以降の日本の明治維新政府樹立の書契を受け取り拒否など、排外政策堅持。 高宗新政は1873年から、日韓…

『プーチンの戦争「皇帝」はなぜウクライナを狙ったか』(真野 森作著、筑摩書房、2018年12月15日発行)

主に、2014年2月に始まったクリミア異変とロシア編入、2014年4月に始まったドンパスの親露派の占拠から5月11日の住民投票、独立宣言、2016年までのその後の各地域の変化を中心とするルポである。 単に現地に入ってみて歩くだけではなく、例えばクリミア問題…

『屈辱の数学史』(マット・パーカー著、山と渓谷社、2022年4月5日発行)

計算ミスによる失敗の例を集めて紹介する本である。本書の中でも触れられているが、特に科学や工学分野では失敗の原因を突き止めて対策を施すことで次の失敗をさけることができる。なので、失敗したことを認め、原因を明確にするのは大変重要である。 そうい…