2021-01-01から1年間の記事一覧

『紫禁城の黄昏、R.F.ジョンストン著・中山理訳、祥伝社、平成17(2005)年3月25日発行』

1912年共和国の誕生から、馮玉祥が1924年溥儀皇帝(宣統帝)を宮廷から追放するまでの13年間が主体で、その前後に触れる。1898年徳宗帝(光緒帝)が康有為の上書した改革案を実行した年から1931年満州国が出現するまで。 1898年当時、英国商人達は、まさに目…

『月はすごい 資源・開発・移住』(佐伯 和人著、中公新書、2019年9月25日発行)

月の資源開発、移住、他の惑星探査への基地という観点から月について解説する面白い書である。 月面には1ミリメートルよりも小さな隕石でも秒速10キロメートル以上の速度で落ちてくる。月面の岩石は隕石に砕かれてレゴリスという細かな砂になる。このため月…

『満州と岸信介ー巨魁を生んだ幻の帝国』(太田 尚樹著、KADOKAWA、2015年9月25日発行)

岸信介を主に満州国をキーワードとして描いた書。 満州国は昭和6年(1931)9月18日奉天郊外柳条湖満鉄路線爆破で満州事変が始まる。満州国で建国にあたっては日本の官庁から多くの人材が登用された。第一陣の出発は1932年6月らしい。岸信介は日本で産業開発…

『岸信介 ―権勢の政治家―』(原 彬久著、岩波新書、1995年1月20日発行)

『石橋湛山の65日』に、「石橋湛山が組閣名簿をある人(昭和天皇)に提出したとき、深刻な表情で、岸をなぜ外務大臣にしたのか?彼は先般の戦争に対して東条以上の責任がある、と述べた。」という話がでており、初めて関心を持って調べてみようと思い、本書…

『絶望死のアメリカー資本主義がめざすべきもの』(アン・ケース、アンガス・ディートン著、みすず書房、2021年1月18日発行)

20世紀は健康が改善した世紀。米国は1900年から2000年までの45~54歳=中年白人死亡率は1900年には10万人あたり1500人(1.5%)、2000年には400人(0.4%)に減少した。しかし、20世紀の終わり頃から中年非ヒスパニック白人(USW)の死亡率が上がり始めた。…

『高地文明―「もう一つの四大文明」の発見』(山本 紀夫著、中公新書、2021年6月25日発行)

発行日前に読み終えたのだが、久しぶりに日本人の著者による面白い本だ。日本の中学や高校の教科書に載っている大河のほとりに生まれた四大文明ーメソポタミア、ナイル、インダス、黄河ーという概念がどのように出来上がったのか、という疑問から説き起こす…

『日銀漂流 試練と苦悩の四半世紀』(西野智彦著、岩波書店、2020年11月26日発行)

第1章松下時代 1996~1998年 1997年6月11日成立。「憲法第65条 行政権は、内閣に属する。」と日銀の独立性をめぐる闘争部分が一番面白い。1997年10月末から頭の三洋証券会社更生法、コール市場でのデフォルト、北海道拓殖銀行の破綻、山一破綻と続き、各地で…

『見えない絶景 深海底巨大地形』(藤岡 換太郎著、講談社ブルーバックス、2020年5月20日発行)

世界の海を仮想潜水艇で順番に潜航航海するという趣向は面白い。しかし、やはり海底の話はちょっと地味である。プレートテクトニクスの話はある程度知っているので再び感がある。冥王代という、46億年前に地球が生まれてから40億年前までの話は、個人的には…

『石橋湛山の65日』(保坂 正康著、東洋経済新報社、2021年4月8日発行)

昭和21年吉田内閣の蔵相となり、昭和22年4月の選挙で静岡県から当選するが、5月に公職追放。この間の記録をみると吉田茂の関与を否定できない。吉田茂という男は極めて卑劣という感を持つ。 石橋湛山という人物については本書を読むまであまり知らなかったが…

『21世紀の資本』(トマ・ピケティ著、みすず書房、2014年12月8日発行)

GDPはある国の国境内でその年に生産された財やサービスの量。GDPから減価償却を差し引いたものが国内純生産。それに外国からの純収入を足したものが国民所得である。 国民所得=国内算出(国内純生産)+外国からの純収入 国民所得=資本所得+労働所得 資本…

『ロッキード疑獄 角栄ヲ葬リ巨悪ヲ逃ス』(春名 幹男著、KADOKAWA、2020年10月30日発行)

本書は主に米国で公開された資料や日本の裁判記録などをもとに調査し、分析した書である。独自のインタビューもあるが、インタビューは、みな、かなりの年月を経てからの記憶に頼るインタビューなので結論の強化という印象を受ける。本書は米国資料を何度も…

『予測学 未来はどこまで読めるのか』(大平 徹著、新潮選書、2020年8月25日)

話題レベルの事柄を寄せ集めただけのざっぱくな本である。予測学というより予想学という方が適切ではないか?

『逆転の大中国史 ユーラシアの視点から』(楊 海英著、文春文庫、2019年3月10日発行)

ユーラシアの草原を中心にして中国を見ると、草原から下ったところにある狭い地域となる。中華思想は中国をすべての中心であると考えるが、ユーラシア史観からは反知性的であるとする。中国の歴史の中で、農耕民族の王朝は、前漢・後漢、明の700年、遊牧民が…

『アルツハイマー征服』(下山 進著、株式会社KADOKAWA、2021年1月18日発行)

家族性アルツハイマーの家系の話がイントロと最後に出てくるが、これを読むと人生が運に左右されていることを痛感する。運が良い人と運が悪い人がいるが、アルツハイマー家系に生まれた人たちも、そうでない人達と同じように幸せに生きる権利がある。 アルツ…

『住友銀行秘史』(國重 惇史著、講談社、2016年10月発行)

バブルの末期に住友銀行とイトマンであったできごとの裏話。 住友銀行の天皇といわれた磯田一郎会長が辞任するまでのいきさつ、磯田の腹心でイトマンに送り込まれた河村良彦社長が伊藤寿永光に取り込まれて不動産事業にのめりこむ。また、絵画取引では許永中…

『デジタルエコノミーの罠』(マシュー・ハンドマン著、NTT出版、2020年11月20日発行)

Googleはスピードを最も重視している。2000年初頭の実験では、検索クエリーで10件を返すよりも20件を返すとほんの僅か応答が遅くなる。それによってトラフィックは2割減る。粘着性(=繰り返し戻ってくる)は、スピードによって決まる。 ネットフリックスの…

『世界の起源ー人類を決定づけた地球の歴史ー』(ルイス・ダートネル著、河出書房新社、2019年11月30日発行)

科学者が書いた人類の歴史である。本書は地球という星の地学的変動と人類の活動を関連づけて説明している。大気などの地球環境の物理的な特性、陸の成り立ち、大陸の移動などによって人類の歴史が決定付けられているという視点が斬新である。地球の変動は億…

『ウォール街のランダム・ウォーカー 株式投資の不滅の心理』(バーキン・マルキール著、日本経済新聞社、2016年3月9日発行)

ファンダメンタル価値は投資対象には絶対的な価値があり、それは現状分析と将来予測を注意深く行うことで推定できると考える。砂上の楼閣派はケインズの美人投票論に代表される。 1959年米国はトロニクスブームの成長株コンセプトでPERがプラス15倍、意味不…

『大英帝国の歴史 下』(ニーアル・ファーガソン著、中央公論新社、2018年6月10日発行)

下巻は、第5章から始まるが、1880年代から20世紀初めのアフリカ分割の話。1882年9月イギリスによるカイロ占領。ロスチャイルドの協力で南アフリカでダイヤモンド帝国を作ったセシル・ローズが象徴する経済力と軍事力(マキシム機関銃)による。1884年11月か…

『大英帝国の歴史 上』(ニーアル・ファーガソン著、中央公論新社、2018年6月10日発行)

イギリスは、17世紀央、スペインやポルトガルに遅れて帝国建設に参入した新参者であった。最初は、スペインやポルトガルの海外基地を襲撃して金目の物を奪い取ることからスタートした。イングランド王室は17世紀には海賊に私掠船としての許可を与えて海賊行…

『ファクトで読む 米中新冷戦とアフター・コロナ』(近藤大介著、講談社現代新書、2021年1月20日発行)

21世紀は米中新冷戦の時代。中国の統治体制は2020年10月の5中全会で実質的には習近平による皇帝政治となった。 2013年習政権の目標 1.2021年までに日本を抜いてアジア1になる。⇒すでに達成済み 2.2035年までに一帯一路を完成し、ユーラシア1になる。 …

『ハイブリッド戦争 ロシアの新しい国家戦略』(廣瀬 陽子著、講談社現代新書、2021年2月20日発行)

本書はハイブリッド戦争を外交政治面で位置付けることを目的とする。ハイブリッド戦争は2013年11月のウクライナ危機でロシアが使って注目を集めた。 武力対決以外に、政治、経済、プロパガンダ、心理戦、テロのようは非対称戦争、サイバー戦、民間軍事会社(…

『地球に月が2つあったころ』(エリック・アスフォーク著、柏書房、2021年1月8日発行)

タイトルからは地球に月が2つあったころの話をしていると思われるのだが、本文を読んでも、そのような内容の記述が出てこないのだが。読み方が悪いのだろうか? 地球にティアという隕石が衝突してはじきさされた塊が月になったという巨大衝突説が数回語られ…

『時を刻む湖 7万枚の地層に挑んだ科学者たち』(中川 毅著、岩波科学ライブラリー、2015年9月9日発行)

福井県の水月湖の固定堆積物は75メートルにわたり、ボーリングで取得したコアには縞模様がある。縞模様は1枚が1ミリ程度の薄い地層で、1枚が1年にあたる。これを年縞というが、45メートル、時間にして約7万年分になる。綺麗な年縞ができる湖は、世界中でも他…

『地図づくりの現在形 地球を測り、図を描く』(宇根 寛著、講談社選書メチエ、2021年1月8日発行)

地図の作り方はアナログ測量から、デジタル、航空・衛星、通信を活用した測量へと根本的に変化している。デジタル化は、飛行機による写真やレーザ計測、衛星からのGNSS(Global Navigation Satellite System)による電波測量をコンピュータで処理している。G…

『日本人のための第一次世界大戦』(板谷敏彦著、角川ソフィア文庫、2020年11月25日)

第一次世界大戦を軍事技術、経済、および日本の果たした役割といった視点を加味して説明した良書だ。 軍事技術についていえば、銃砲、軍艦、潜水艦、戦車、飛行機の進化などが第一次大戦を機に発展したことがよく分かる。第一次世界大戦はどちらかというと地…

『新型コロナからいのちを守れ! 理論疫学者・西浦博の挑戦』(西浦博・聞き手川端裕人、中央公論新社、2020年12月10日発行)

2020年の新型コロナウィルス感染症の第一波での厚生労働省クラスター対策班で活躍した北大の西浦先生の活動体験を聞き語りでまとめた本である。 生々しいというか、細部の活動の話、生々しい話が多すぎて本質が見えにくくなっている気もするが、同時代に起き…

『明智光秀 織田政権の司令塔』(福島 克彦著、中公新書、2020年12月25日発行)

明智光秀の事業について新しく判明した文書などに基づいて丹念に説明している好著。 血なまぐさい戦いのことはあまり具体的に触れていない。むしろ坂本城の構築、京都での代官政務、丹波攻略、丹後・細川藤孝との関係、連歌師、などとの関係など、実務家的な…

『ダークマターの謎に迫る 見えない宇宙の正体』(鈴木 洋一郎著、講談社ブルーバックス、2020年11月20日)

宇宙にある物質とエネルギーで68%がダークエネルギー、27%はダークマターである。ダークマターは直接検出できていない。 結局のところ、ダークマターはあるのは確かとされて、観測の試みがいろいろなされているが、いまだに発見できていないといことのようだ…

『外資系アナリストが本当に使っている ファンダメンタル分析の手法と実例』(松下 敏之・高田裕共著、プチ・レトル株式会社、2017年7月発行)

企業のファンダメンタルを分析する手法についての本。ファンダメンタル分析とは企業の実際の活動を分析し、評価する方法。株価は企業が将来生み出すキャッシュフローを期待して決まるということを前提とする。必然的に長期的な視点となる。但し、長期的に株…